内容説明
絶版、焼却、閲覧制限は、まちがいではないか?差別的な表現にも、表現の自由はあるか?長野市・焚書事件の経過と社会的背景を大胆にえぐる。日本における88年の翻訳・出版の歴史を詳細にえがく。オリジナル版・マクミラン版・岩波書店版を比較研究。
目次
第1部 消される「黒人」像―「ちびくろサンボ」「ジャングル大帝」
第2部 差別的表現と表現の自由―「ちびくろサンボ」論議とかかわって
第3部 「ちびくろサンボ」と黒人解放―ジョン・G.ラッセル氏(黒人)への反批判
第4部 「ちびくろサンボ」の歴史―日本における88年の歩み
おわりに―子どもの文化財(絵本・児童文学)創造の原則
あとがき―「朝まで生テレビ」と糾弾
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スイ
8
「ちびくろサンボ」の絶版は知っていたが、長野市では市が幼稚園や図書館に廃棄を求め、実際に数園の幼稚園が絵本を燃やしたというのは衝撃だった。 行政が表現の善悪を決定することには反対だし、出版社の絶版にも疑問が残る。 その辺りは著者の主張に同意するが、容易に頷けないところも多い。 著者は無意識に差別をすることはありえないと言うが、社会が容認してしまっていれば無意識に差別が根づくことは大いにあり得るし、無知から出た言葉や行為を野放しにして良いとは思わない。 また、差別だと感じればその人は声をあげるのだから、2017/01/03
viola
5
文学作品の中の差別的表現・偏見に興味あるのでサンボ関係を。『ちびくろサンボとピノキオ』の続編のようです。(これから読む予定)章や節が細かくて分かりやすく、内容も興味深いです。批判するって大事なことだけども、批判されたら批判され返す!売り言葉に買い言葉!みたいになっているのはどうなのか・・・。全体的にとにかく批判が多く、自分が一番正しいんだ、といったようになってしまっているのがとても気になりました。特にラッセル氏批判が凄い。何ページも批判されたにしても、何10ページかけて言い返しているんだ・・(苦笑)2011/07/16
時雨
2
1990年11月、長野市長の名で『ちびくろサンボ』の廃棄・焼却処分を依頼する文書が、長野市内の私立保育園・幼稚園に送達された。一部の園では同絵本が文字通り「焼かれた」だけでなく、家庭で所有する同絵本の廃棄(!)までもが父母に依頼されたのだという。本書は、行政の指導の下で行われたこの焚書事件を真っ正面から取り上げた貴重な資料である。事件からまだ30年と経過していない現在、また歴史上の「差別主義者」の銅像を攻撃することで差別を糾弾する運動が世界中に吹き荒れる中で、差別撤廃の道を再考する格好の教材になるだろう。2020/06/20
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
0
1999年9月21日 図書館
フジタ
0
長野五輪に向けて人種差別撤廃へ取り組む、という姿勢はいいとしても、その結果が絵本の焚書というのはどこから見ても間違い。しかもそれが1990年なんて最近の出来事なんだからおそろしい話。/差別語があるから差別が生まれるのではなくて、差別意識があるから特定の言葉が差別語として使われる、というのはその通りだと思う。言葉狩りが腑に落ちない気持ちをガッチリ代弁してもらった気分。ただ、筆者が受けた批判への反批判は…ちょっと、分量的に、おなかいっぱい…/ちびくろサンボの各版ごとの比較はおもしろかった!2015/04/22