内容説明
なぜ,戦争は拡大するのか―日中戦争と太平洋戦争をつないだ「仏印進駐」をめぐり,日本の陸海軍,外務省,宮中グループの錯綜する動きを精細に追跡する。〈両論並立的状況〉のなかで各セクションの対立・抗争がいかに戦争衝動を強めることになるか―戦争指導・遂行における天皇の役割と天皇制の機能のしかた,を明快に描く注目作!
目次
序章 分析の視角
第1章 セクショナリズムと戦争衝動
第2章 両論並立的状況と戦争遂行集団
第3章 戦争遂行集団の分裂と戦争拡大
第4章 戦争衝動の頂点に向かって
終章 戦争衝動と「東亜諸民族解放」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フンフン
4
日本軍の仏印進駐についての研究である。それが実行されるにあたっては、陸軍・海軍・外務それそれ、およびさらに同じ省内でも分裂・抗争があり、だれも内容を統一させることができず、日本の国策が矛盾に満ちた「両論並立」として策定された経過をつぶさに描いている。著者はこれを戦前の天皇制から説明し、それぞれのセクションが独立して上下関係なしに天皇に直属していたがゆえにこうなったのだとしている。そうは言いながら、あとがきでは現代の日常にも、事を荒立てない玉虫色の傾向があることを認める。結局両論並立の真因は不明。2021/02/22