内容説明
この問題を避けて近現代史そして現在を語ることはできない。文明化・近代化の名のもとに、大国がほしいままにした地域や人々の暮らし。それが引き起こした戦争や暴力、差別と貧困、そして分裂。今に続く“責任と応答をめぐる問題群”を歴史家たちが捉えかえす。
目次
「植民地責任」論とは何か
第1部 戦争責任論から「植民地責任」論へ(戦争責任と植民地責任もしくは戦争犯罪と植民地犯罪;「人道に対する罪」と「植民地責任」―ヴィシーからアルジェリア独立戦争へ ほか)
第2部 「植民地責任」をめぐる謝罪と補償(ハイチによる「返還と補償」の要求;復権と「補償金ビジネス」のはざまで―ケニアの元「マウマウ」闘士による対英補償請求訴訟 ほか)
第3部 脱植民地化の諸相と「植民地責任」(イギリス植民地問題終焉論と脱植民地化;アルジェリア戦争と脱植民地化―「エヴィアン交渉」を中心にして ほか)
著者等紹介
永原陽子[ナガハラヨウコ]
1955年生。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。南部アフリカ史、帝国主義史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tellme0112
12
戦争責任と植民地責任、戦争責任と戦争犯罪、植民地責任と植民地犯罪について、確かに区別して考えたことがなかった。こういう整理の仕方が大事なんだな。もう少し早くこの本に出会いたかった。2009年発行。すごい本だわー。2020/08/27
人生ゴルディアス
5
読書動機は、お高く留まった欧米リベラルの二枚舌を……というものだったが、自省を促される内容であった。特に日本人の第二次大戦観は被害者意識が強いうえ、極東裁判によって禊が済んだものと見なされているが、その裁判において大陸や朝鮮に対する占領についての問題は取り上げられなかったため、帝国主義が引き起こした問題は歴史的認知の狭間に落ち込んでしまったとする指摘は唸った。また、欧州の植民地問題は白人最悪だなと思いながらも、今の日本人だって二世代も三世代の前のことを指摘されて苛立つのは嫌韓などの流れから明らかだ。難問2024/04/07
メルセ・ひすい
2
★9.11のため盛り上がり損ねた!◎ダーバン会議とは2001.08.31~南アのダーバンで国連主催で開催 正式名「人種主義・人種差別・排外主義および関連する不寛容に反対する世界会議」 奴隷制と奴隷貿易並びに植民地主義についての歴史的評価を下し「人道に対する罪」にも言及した点で、従来の国際社会の常識を破ったものである。文明化・近代化の名のもとに、宗主国等がほしいままにした地域や人々の暮らし。それが引き起こした戦争や暴力、差別と貧困、そして分裂…。今に続く「責任と応答をめぐる問題群」を歴史家たちが論ずる2010/02/03
メルセ・ひすい
2
12-106.108★5 原点は独・ナチスの犯罪から・不正が従来のあらゆる法の常識を超える規模と内容。`48「ジェノサイト条約」は、戦時・平時を問わず大量殺害を犯罪とする考え方を国際人道法として確立した。具体的には「国際刑事裁判所規定」で強姦・性奴隷等・性暴力や強制失踪・アパルトヘイトなども明記、「人道に対する罪」概念は拡大・深化されそれを裁く常設の法廷が設けられるに至った。ただし、戦勝諸国=宗主国 〃 の植民地支配の歴史は問題外???とした。 2010/02/01
ハマザキカク
0
2刷りになってるのが不思議。ムガベの白人農園襲撃を非難している朝日新聞を欧米の論調を鵜呑みにしているという批判はどうだろうか? ヘレロ族がドイツに対して補償を求めているのに対しナミビア政府が部族主義から距離を置こうとしている事が興味深い。一方、キバキ政権になってからマウマウ団によるイギリスへの補償金ビジネスが盛り上がっているのが対照的。2015/07/04