内容説明
「みんなの気持ちがわかるって、だれの気持ちもわからないことよ」大学生活最初の夏、故郷での同窓会に出席した里伽子と拓。しかし、東京に戻った途端、大波瀾勃発。拓の留守アパートに、泥酔した美女―津村知沙が眠っていたのだ!緩やかに距離が縮まりつつあった二人の関係は何処へ。ティーン小説の鬼才が、十代の終わりと愛を瑞々しく描く。
著者等紹介
氷室冴子[ヒムロサエコ]
1957年北海道生まれ。77年「さようならアルルカン」で第10回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。2008年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
40
大学生活最初の夏、故郷での同窓会に出席した里伽子と拓。しかし、東京に戻った途端、大波瀾が勃発する第二弾。帰宅した拓の留守アパートで、勝手に泥酔して眠っていた美女・津村知沙の存在。そして離婚した父の相手との邂逅。大学の先輩たちの恋愛に振り回されたり、父の相手に凹まされた里伽子を慰めたり、相変わらずな拓の様子が読んでていて懐かしかったですけど、それでも高校時代とはまた違った確かな成長が感じられて、これからもすれ違って喧嘩したりしながら、二人で絆を育んでいくんんだろうなと思えるその関係性がなかなか良かったです。2023/07/07
マホカンタ
39
年齢的には、間違いなく拓や里伽子の親世代であるのに、読みながらすっかり彼らの目線で物語に没入できるのは、私もあの時代、同じように地方から大学進学で上京し、一人暮らしをしていたからだろうか。前作で1人、高知で鎧に身を包み、弱味を見せまいと虚勢を張っていた里伽子の脆さが、今作では際立っている。里伽子の傍に、盾となり毛布となり寄り添う拓がいるからこそ、里伽子は立ち向かうことができるんだろうな。もしこれが、里伽子目線で語られた話だったら、生々しくって読めなかったはず。拓目線だからこそ成り立つ物語。読んでよかった2023/09/20
遙
22
結婚まで漕ぎ着く二人が観たい・・・待望の新装版! 時間が進んでもままならない2人。里伽子の事で悩む時間がないくらい周りも青春で溢れてて、巻きに巻かれる拓。里伽子の今回の境遇は前作に増して同情してしまった。「みんなの気持ちがわかるって、だれの気持ちもわからないことよ。ただの八方美人なのよ。拓は」の台詞には、男って女の悪口嫌がるけど、共感して欲しい時もあるのよなんて、里伽子の気持ちがわかりみ過ぎた。 でも空気読み過ぎちゃったり、時に男気見せる拓が大好きだ。良い奴なんだ。 本当に良い作品。続きがあればなぁ・・・2023/07/12
はる
21
田舎育ち故なのかマイペース・鈍さを感じる拓のもがいている語りが何だか心地良い。物語としては不倫にまつわるトラブルがメインで、女の厭味のバトルやら読んでいて疲れる展開が多かったが、拓の心中のツッコミのおかげで読み進められた。辛い時に助けてくれるヒーローではなくても、寄り添ってくれる、そばに居てくれる存在の拓がいる里佳子が羨ましいなと思う。2024/07/20
はじめさん
18
アニメ映画化もされた「海がきこえる」続編。上京し、大学生となった拓。東京に戻り女子大生になった里伽子とも友人として、ゆるやかに関係は続いている。上梓されたのは1995年、加筆訂正されたのは1999年。iモードはあったが、まだまだ携帯電話は普及しておらず、家の留守電にメッセージ吹き込んだり、誰からの架電かもわからない時代。コール5回でアイシテルのサイン。不倫の道を歩む、美人の大学の先輩や、わだかまりも緩くなってきたと思われた、父親と不倫の果てに結ばれた義母との関係性…思春期の2人にとっては刺激の強い愛の劇場2023/09/29
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