出版社内容情報
木下昌輝[キノシタマサキ]
著・文・その他
内容説明
「わしらは聖徳太子から四天王寺と五重塔を守護するようにいわれた一族や」美しい宝塔を建てるため、百済から海を渡ってきた宮大工たち。彼らが伝えた技術は、飛鳥、平安、戦国時代と受け継がれた。火災や戦乱で焼失しながら、五重塔は甦る。そして、けっして地震によっては倒れなかった。なぜなのか?時代を縦横にかけ巡り、現代の高層建築にも生きている「心柱構造」の誕生と継承の物語。
著者等紹介
木下昌輝[キノシタマサキ]
1974年奈良県生まれ。2012年「宇喜多の捨て嫁」でオール讀物新人賞を受賞し、作家デビュー。2015年単行本『宇喜多の捨て嫁』で第152回直木賞候補。同作で第4回歴史時代作家クラブ賞、第9回舟橋聖一文学賞、第2回高校生直木賞、咲くやこの花賞(文芸その他部門)受賞。2019年『天下一の軽口男』で第7回大阪ほんま本大賞受賞、『絵金、闇を塗る』で第7回野村胡堂文学賞受賞。2020年『まむし三代記』で第9回日本歴史時代作家協会賞、第26回中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
29
世界最古の木造建築は、誰もが知る法隆寺の五重塔だ。なぜ地震大国・日本の五重塔が地震で倒壊しないのか?その理由は未だに解明されていない。物語は、法隆寺と四天王寺を建てた聖徳太子と東京スカイツリーの携帯ストラップを狂言回しとして、戦国、平安、江戸、飛鳥と時代を自在に往来して、五重塔の建築に力を注いだ人々を描いていく。その発端、仏教伝来の章が興味深い。インドで生まれた仏教が、アニミズム的な日本人に受容される経緯、それは、雨が多く地震のある風土に仏舎利塔を建てる努力と通じる。「変容を恐れるな」の精神の賜物だ。2022/12/25
niisun
28
数々の震災に耐えてきた五重塔。その伝承の物語。世界最古の企業として名を馳せる金剛組の社史のよう。聖徳太子が百済から招聘した造寺工が、地震と雨の多い倭国で生み出した五重塔の構造。作中でも造寺工の金剛が言う“つよい建物は、すべからく美しい”。これは建築・土木・造園を勉強した人なら必ず習う“用(使い易さ)、強(つよさ)、美(美しさ)”。用強美は共存するという考え方。今なお解明されない“心柱”の役割は、神秘的で小説の題材にはもってこいですね。物語の案内役が聖徳太子とスカイツリーのストラップというのはちょっと。。。2023/01/09
Y.yamabuki
20
聖徳太子の時代から続く宮大工金剛組をモデルにした連作短編集。大阪の四天王寺の五重塔は、六世紀の建立以来何度も火災や戦乱に会いその都度再建されている。各話はその時々の再建途上の様子を、跡を継ぎ「正大工」の地位を得た者の苦悩と矜持と共に描いている。作中には塔の詳しい説明がある一方ファンタジックな編もある。そのギャップに若干戸惑ったが、面白い作品だった。そして何と言っても、長い歴史の中、途切れること無く「技」を繋いでいった人達がいることに感動を覚える。金剛組専属の宮大工木内組の棟梁の方の解説も興味深かった。2022/11/27
豆電球
18
奇を衒いすぎではと思う部分も多々ありましたが、今も解き明かされることのない五重塔の謎はとても興味深かったです。色んな時代において同じ塔を建立(再建立)した人たちに思いを馳せ、豊かな物語を紡ぐ。なんともロマン溢れる連作短編集でした。こういう角度から神社仏閣を見た事がなかったので次に訪れる時はじっくり見てみたいと思います。本当にいにしえのロマンですね。今も修繕を繰り返しながら存在している事にありがたみを感じずにはいられません。そしてそれが現代の技術へと受け継がれていく感覚にもゾクゾクしました。2023/01/23
のじ
9
天王寺さんの五重塔を建てるのを代々受け継いできている金剛っていうお寺大工さんのおはなし。いろんな時代に起きたことを書いていて、どこまで史実に即しているんだろうとおもう。今の天王寺さんの五重塔はあじけないコンクリ造りなのも複雑な気持ちになるなあ。最近、昔の建物を復元するときに木造に戻すのが流れになってきていてちょっといいことだなと思っているんだけど、代々その技術も大切に受け継いで行かれると良いなあと思います。2023/04/14