出版社内容情報
泥酔からめざめた彼は、妻だという見も知らぬ女から他人の名前でよばれて愕然とした--著者の初期長篇ミステリーの傑作。
内容説明
「あんた、どなた?」妻、友人、そして知人、これまで親しくしていた人が“きみ”の存在を否定し、逆に見も知らぬ人が会社社長“雨宮毅”だと決めつける―この不条理で不気味な状況は一体何なんだ!真の自分を求め大都市・東京を駆けずり回る、孤独な“自分探し”の果てには、更に深い絶望が待っていた…。都筑道夫の推理初長篇となったトリッキーサスペンス。
著者等紹介
都筑道夫[ツズキミチオ]
1929年東京都生まれ。10代の頃から小説を発表。推理小説の翻訳にも携わり、早川書房で「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の編集長を務め、「ハヤカワ・SF・シリーズ」の創刊に尽力。61年『やぶにらみの時計』を発表。以後、評論やエッセイでも活躍。2001年に『推理作家の出来るまで』で第54回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞。02年に第6回日本ミステリー文学大賞を受賞。03年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nemuro
56
いい感じの表紙イラストに惹かれて手に取ってみた。都筑道夫の復刻版だろうか。帯には「徳間文庫41年目の本気【トクマの特選!】」。そんなことが進行していたとは露知らず、迂闊である。他に筒井康隆、山田正紀、矢野徹ら数人の作家が対象らしいトクマの特選!表紙イラストが特に格好良い都筑道夫と山田正紀あたりを追いかけてみようか。さて本書。「恋人、友人、知人に否定された男の奇妙な自分探しの迷宮」。前衛的な文体と各章に配置された真鍋博のイラストも悪くない。1960年、新幹線も首都高も開通しておらず変わりゆく東京の今が甦る。2023/08/19
ぽろん
34
まさか、60年も前の作品とは思わず、図書館の新刊コーナーからお持ち帰り。深酒をすごして目覚めたら、自分は、別人に。確かに携帯も出てこないが、事件解決に向かってスマートに誘導してくれる。平易な文章で読みやすかった。2021/12/05
sanosano
12
おそらく30年ぶりくらいの再読. もちろん細部は忘却. もっとサスペンスだった気がするがコメディ. あとがきにもあるように都市小説. それにしても時代は移りにけり.2022/04/23
夢の中で枕濡らし
11
ページをめくる度文字を読む度まさしくやぶにらみされている気になり、ここでやぶにらみ読了中途中下車の旅になるのかと思っていたが維持と矜持と時間無駄にらみになるのが怖くて読みきりましたけども、それもそのはず新鋭のシマシンヤ様のオサレデザインで気づきませんでしたがこの本自体ははるか五十余年あまり前に刊行されたお本でしてそのアンバランスな地代を感じて愛に近づけよと言われましても(誰も言ってはおりませぬが)、誰が何を求めて何をしてどこに入り浸ってるのかを理解がしずらく、シンプルに面白くないとも言いづらく、眠れぇ~2025/01/18
やまだん
9
「きみ」=浜崎誠治は、これまで親しくしていた内縁の妻、隣人や、兄に存在を否定される。反対に、見も知らぬ人達が、「きみ」を会社社長の雨宮毅だと決めつけてくる。この不条理で不気味な状況の中、真の自分を求め、自分の足取りをたどる。極めて魅力的な謎、設定。途中にあるミステリうんちくも面白い。しかし、都筑道夫のユーモアや文体がイマイチ肌に合わず、短い作品だが、描写や話の進め方が分かりにくく、没入できない部分があった。伏線はそれなりに貼られているのだが、真相の意外性に乏しい。さほど面白いと思えなかった(45点)。2022/09/10