出版社内容情報
著者最後の長篇、待望の初文庫化。
内容説明
生涯五本の長篇しか残さなかった小泉喜美子が、溺愛するコーネル・ウールリッチに捧げた最後のサスペンス長篇。「わたしは“死に至る病”に取り憑かれた」―美人女優は忠実な運転手を伴い、三人の仇敵への復讐に最後の日々を捧げる。封印されていた怨念が解き放たれる時、入念に仕掛けられた恐るべき罠と目眩があなたを襲う。同タイトルの中篇を特別収録。
著者等紹介
小泉喜美子[コイズミキミコ]
1934年東京都生まれ。三田高校卒業後、ジャパンタイムズに勤務のかたわら、翻訳を手がける。63年第1回オール讀物推理小説新人賞の応募作である『弁護側の証人』で注目される。海外ミステリの訳書も多い。85年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
60
死病を患った女優、彼女は死ぬ前に仇敵に復讐しようとするのだが…。トリックとしてはある形式の物に属するのだが、それはミステリを読み慣れていると簡単に予想できてしまう。その為登場人物の行動、心情に重きを置いた読み方になってしまうかな。最終稿の長編とそれの原型を成す中編が同時収録されており、読み比べると何処がどう変化したのかわかる造りになっているのもポイント高いかな。個人的には長編はトリックが圧倒的に進化している代わりに、復讐部分がちょっと冗長になっているように感じた。辛味に絡んだ破滅への道行、堪能できました。2024/05/10
中玉ケビン砂糖
53
「愛と殺人はよく似ている(…)恋する者は『あなたなしでは生きていけない』と言い、殺人者は『あなたがいては生きていけない』と言う」。解説は次代の新鋭・新川帆立。先の文言に「どちらにせよ、あなたより先には死ねない」という新解釈を説き、さりげなく、かつ巧みに配置されたミステリ的アイテムの妙味を語る。表題作は「愛ゆえに殺し、愛ゆえに死を選ぶおんな」の話。そうだとしてかつて「ムードサスペンス」等々と銘打たれ「伊達男が美女たちと惚れた腫れたをしている内に事件に巻き込まれる」という漠とした一群があったが、2022/11/02
うまる
40
【マン読:私7】帆立さんが解説なので手に取る。愛と殺人の絡み合いと、捻った真相で面白かったのですが、特別収録の同じ話の中篇が、すっっっごく要らなかった。同じ話を何度もしてくる人が嫌いなわたしには、同じ話を続けて読むのが苦痛でした。作家さんの熱烈なファンでもないし、同じ話の収録先違いまで考察したくなんかないですよ。だいたい特選なのに2パターンあるって何なの。選してないじゃん。長篇の方は面白いと思ったのに、2度読まされた事で、結果的に微妙な読後感になってしまいました。2022/11/22
geshi
37
女優の復讐劇として読み始めたが、コミカルな刑事のパートがちょっと雰囲気と会わない。犯罪シーンを描かず捜査が迫っている様子もないから、いまいちサスペンスとしては盛り上がらない。愛とその反動としての憎悪をネッチリと書いているから、そっちがメイン。復讐の女神となった女優とその影にいる運転手の、世間からも生のしがらみからも外れた存在感が昭和だからこそ。オチの仕掛けは唐突感あるが、タイトルの「私」が意味する人物が二転三転する展開は楽しめた。同名の中編と比較するとブラッシュアップされている長編の方が好み。2022/01/06
森オサム
36
コーネル・ウールリッチに捧げた著者最後の長編小説。85年の作品だが、82年に書かれた原形となった中編も併録されている。男女の愛憎劇を捻りを効かせたサスペンスミステリーとして仕上げており、人物描写が丁寧で(クドいけど)、どんでん返しが鮮やかな長編版が良かったかな。中編を長編に改稿する事は有るでしょうけど、こうやって併録されて同時に読むのは初めて。人間関係やオチが違っており、読み比べは不思議な体験でしたね。「本格物」とは言えないが、解説に有る様に「変格物」として洒落た雰囲気を楽しんで読んで欲しい。悪くは無い。2023/02/23