出版社内容情報
孤独な老人が出会った若く心優しい女。それは女詐欺師に仕組まれた罠だった。女の裏側を描かせれば一級の著者の文庫書下ろし!
内容説明
彼女は私の生きがいだ、と沢田は思う。大手企業を定年退職後、妻を失い孤独に暮らす沢田は、親子ほど年の離れた晴美と出会った。病弱で薄幸な晴美に心奪われ、金の援助まで考え始めた沢田だが、ある日、晴美を親しげにルミと呼ぶ中年女性の存在を知る。しかも女性はルミの住み処らしき話までするのだ。いったい晴美の真の姿とは?それを知る前に沢田に魔手が―偽りまみれの悪女登場!
著者等紹介
明野照葉[アケノテルハ]
東京都生まれ。東京女子大学文理学部卒業。1998年「雨女」で第37回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。2000年『輪(RINKAI)廻』で第7回松本清張賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
174
私を幸せにする噓なら・・バレなければ・・ずっと騙されたままでもいい。だけど噓は臭うよね。噓にウソを重ね過ぎてどこかに綻びが出来るよね。生まれがらの噓つきはいないだろうに、どうして晴美はこんな生き方しか出来なかったのだろう。まさしく『呼吸するように噓をつく』晴美の人生を私はドキドキしながら読んだ。これまで生きてきて一度もウソなどついた事が無い人などいるだろうか?たまたまそれで亡くなった人がいなかっただけ。たまたま笑って済ませられただけ・・甘い噓・苦い噓色々あるね。エピローグが只々虚しく溜息と共に読了した。2020/10/25
utinopoti27
151
人は誰しも何かしら孤独を抱えている。顔の見えないコミュニティが蔓延る現代社会においては、誰かの温もりを求めれば求めるほど、その影は色濃くのしかかってくる。本作の主人公・武藤晴美は、巧みな嘘を駆使して、孤独な者たちの心の隙間に付け込む悪女なのだ。だが、妻に先立たれた初老男性の蓄財に目を付け、孤独死を偽装した殺人に手を染めた時から、彼女の計算に狂いが生じ始める。嘘で塗り固めた堤防が徐々に決壊し出す後半は、手に汗握るサスペンスに様相を変えてゆく。他人に無防備に心を開く怖さを、あらためて思い知らされる作品だ。2021/05/22
sayuri
117
武藤晴美、工藤留美、吉井順子、3つの名前を使い分けながら、息をするように嘘を吐く女性が主人公。男を手玉に取りお金をむしり取る後妻業をイメージしていたがターゲットは70代の沢田隆、50代の小林瑞枝、30代の友野直也と年代、性別はバラバラ。搾取するものも金品のみならず家事一般、性的なものと様々でその視点が新鮮だった。淀みなく発せられる嘘には一種才能的な物すら感じるも、場当たり的でツメの甘い嘘は読者であるこちら側が不安にさせられる。主人公が追い詰められて行く過程に緊張しエピローグで明かされた真実に愕然とする。 2020/10/10
スエ
106
『誰?』 なんだチミはってか?!そうです、わたすが変なオバさんですッ❢ だっふんだ!! ……ええ。スエの自虐もここまで来ると凄いでしょう?どうぞ笑って下さいませ。なぜか涙がちょちょぎれてきたけどね。さ、遊んでないでレビューよ! 素性を偽り次々とゲームの様に人を欺く女。武藤晴美、38歳「人にいっときの夢と幸せを売る」嘘が嘘を呼び、積もり積もったツケだらけ。果たしてその先は破滅か不滅か?はたまた鬼滅の刃かッ?!(一巻しか読んで無くてすみません)ラストはもう駆け足で読む手が止まらない❢ドタバタすっぞ!!2021/08/03
H!deking
96
おー、初読みだけど面白かった!ちゃんとイヤミスですね。生まれついての嘘つき女が色んな人を騙して騙して騙しまくる、そんなお話です。文体も好みでした。他も読んでみよう!2021/12/21