出版社内容情報
記憶を他人に追体験させる技術が出来たら? このシステムの開発者と被験者たちが織り成す、ヒューマン・ドラマ傑作長篇。
内容説明
被害者の記憶を加害者に追体験させることができる機械“0号”。死刑に代わる贖罪システムとして開発されるが、被験者たち自身の精神状態が影響して、成果が上がらない。その最中、開発者の佐田博士が私的に“0号”を使用したことが発覚し、研究所を放逐された。開発は中止されたと思われたが、密かに部下の江波はるかが引き継いでいた。“0号”の行方は!?
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
北海道生まれ。2005年、『金春屋ゴメス』で、第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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papako
77
作者続けて。時代ものの印象が強い作者の現代もの、しかもSF。死刑に代わる厳罰として被害者の意識を体験させる刑罰0号。贖罪の気持ちを持たせるため?もっと単純に、死刑の代わりの刑罰0号をメインに話が進むのかと思ったら、人格とは。記憶とは。原爆被害者の反核に対する想い。贖罪とは。いろいろなメッセージが込められていた気がします。平和な核攻撃、トラウマになるよなぁ。簡単に面白かったとは言えない。でも読めて良かった。2021/04/12
えみ
66
加害者の贖罪、被害者の救済。終身刑と死刑の間を埋める新たな刑罰「0号」は期待通りの成果を上げる事が出来たのか。それは、人が人を裁くために踏み入ってはいけない禁忌…現在の価値観では計り知れないシステム。くるかもしれない、あるかもしれない「0号」運用に最大級の警鐘を鳴らす超問題作。「0号」システム、即ち加害者に被害者の記憶を追体験させる、脳と記憶を改竄する刑罰。理性では、生物の聖域を犯す許されない行為だと分かっているのに、感情が0号の非人道的な刑罰に期待してしまう。しかし、この物語は更なる危険を見据えていた!2023/04/16
M
58
加害者に被害者の追体験をさせるシステム「0号」。死刑撤廃論に反対の考えである私は、死刑より効力があるのなら有用かもしれないという好奇心と視点で読み始めたので、少し趣というか自分の期待した毛色とは違う、途中からは明らかにSF調の作品であった。2020/03/09
hirune
48
ずっと夢なのか現実なのか判然としない なんとなく不安感の漂う話が続いていく。東京オリンピックが無事に開催できたらしい未来へとだんだん話は進んでゆき、全世界崩壊の危機へと広がってまるでパニック映画のような迫力のクライマックスへ😱読み応えあった〜、面白かったです!しかし江波はるかってなんつー嫌な女だろうってず〜っと思ってたけど…結局一番頼りになる人物だったなぁ😅2020/05/03
ポルコ
37
再読。被害者の記憶を加害者に追体験させ、贖罪させる機械『0号』。その運用と、開発者の懊悩。そしてマクロへと展開していくストーリー。テーマも話の広がり方も、400ページもない作品なのに読み応え抜群でした。大満足。2025/06/15