出版社内容情報
動乱の時期に生きた詩人と、彼を支え続けた妻。至高の夫婦愛とは? 文中の漢詩が深い感動を呼ぶ巨星の到達点!
内容説明
時は大塩平八郎の決起など各地が騒然としている激動期。天領豊後日田の広瀬旭荘は私塾・咸宜園の塾主として二度目の妻・松子を迎える。剛直で、激情にかられ暴力をふるうこともある旭荘だが、本質は心優しき詩人である。松子は夫を理解し支え続けた。しかし江戸で彼女は病魔に倒れる。儒者として漢詩人として夫としてどう生きるべきか。動乱期に生きた詩人の魂と格調高い夫婦愛を描く!
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業。地方紙記者を経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞。2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞。2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。2017年12月23日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふじさん
100
広瀬旭荘は咸宜園の塾主として二度目の妻・松子を迎える。剛直で激情にかられ暴力をふるうこともあるが、本質は心優しき人である。彼の人生は、大坂では緒方洪庵という知己は出来たが、大塩平八郎の乱に翻弄され、咸宜園の門人だった高野長英は蛮社の獄で捕らわれたが、脱獄し行方不明、水野忠邦に見いだされ江戸に出るが、忠邦は失脚し、私塾を開いて糊口をしのぐことになる。まさに、世の中の動きに翻弄される人生。そんな中、妻の松子が病に倒れる。儒者として夫としてどう生きるべきか問われる。動乱期に生きた漢詩人と妻の夫婦愛を描い作品。2023/11/29
KAZOO
95
江戸時代の日田の儒学者で教育者の広瀬淡窓の弟で義理の息子の旭荘(教育者で詩人)の生涯を追った作品です。かなりの癇癪もちで最初の妻から愛想をつかされた主人公が二度目の妻と添い遂げるまでの夫婦愛の物語です。葉室さんにしては珍しい作品ですが大阪での大塩平八郎や緒方洪庵との出会いなどを描いてまた主人公の監視などを楽しませてくれました。2025/03/16
tamami
42
江戸後期の漢詩人として、広瀬旭荘の名は聞いたことがあるが、本書によってその生涯や作品の一端を知ることとなった。資料によれば、旭荘には『日間瑣事備忘』という二十六歳から死の歳まで書き継がれた日記があり、葉室さんは本書中に記されている『追思録』とともに、執筆の参考にされたのではないか。作品に示された旭荘の妻松子に対する思いの深さ、それを形にした行跡が、作品に散りばめられた日中の漢詩文とともに、葉室さんの手によって一枚一枚連続する墨絵のように活写され、読みながら思わず涙してしまうこともあった。比べるのも烏滸が→2020/12/27
ichi
14
帯の「至高の夫婦愛!」とあったので、期待大でしたが、旭荘の妻松子に対してのDVにまったく共感出来ず、妻の大切さに気づいたら、もう遅し!というストーリーに残念感。松子がかわいそうでならなかった。2020/01/21
鉄人28号
13
☆☆ 広瀬淡窓の養子で咸宜園の塾主、旭荘とその妻、松子の格調高い夫婦愛が主題。孟子の教えにある「父子親あり、君臣義あり、夫婦別あり、長幼序あり、朋友信あり」という五倫の道は大切である。これがおろそかにされると世の中が乱れる。葉室麟の作品には、必ず人の矜持、志、仁が描かれている。これも当世、あらためて大事にしなければならないものである。 2020/03/13