出版社内容情報
手相を見てもらいたいと思いつめた娘の秘密、金魚が死んだ毒饅頭の謎――江戸風物詩にまつわる洒落た連作ミステリ
内容説明
「相性を見てほしい」真剣な顔をした娘が本当に占ってもらいたかったものとは(手相拝見)。金魚が一匹残らず死んだ。さらには人間まで…もしやあの饅頭に毒が?(金魚狂言)。花火が終わって静まり始めた川に浮かぶ船には一体の屍体が(仙台花押)。八丁堀同心・夢裡庵が大砲隊の前に仁王立ちする最終話(「夢裡庵の逃走)」を含む、江戸が舞台の連作ミステリ十一篇。
著者等紹介
泡坂妻夫[アワサカツマオ]
1933年、東京都生まれ。76年『DL2号機事件』が第1回幻影城新人賞佳作入選。78年『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞、90年『蔭桔梗』で直木賞を受賞。奇術家としても高名で、石田天海賞を受賞している。2009年永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
56
江戸の風情を楽しめる捕物帖下巻。本書も著者にしてはミステリとしての要素は薄めであるが、江戸の文物やそこで暮らす人々の様子を見るだけで駘蕩とした気分になれる気がする。構造はやはり様々な人々が謎を解いていく曼荼羅模様のような作品であるが、上巻に比べて夢裡庵先生の出番は多め。特に最後の話等はタイトルだけで満足感一杯である。面白く読めたのは著者らしさが表れている「一天地六」や登場人物の掛け合いが面白い「金魚狂言」。そして何といっても「夢裡庵の逃走」。主人公が去り江戸の世が終わると共に、この物語も終焉を迎える。2018/01/22
タカギ
24
下巻も安定の泡坂クオリティ。上巻の解説が芦沢央、下巻は澤田瞳子。作家にも泡坂信奉者の何と多いことよ。最終話の「夢裡庵の逃走」がやっぱり印象深い。解説の澤田氏の言う通り、江戸の街の終焉を象徴する物語だと思う。江戸の町人たちが、華のお江戸の街を作った徳川家びいきだった、という一文には、なんとなくうれしさを感じた。江戸の空気感を堪能させてもらいました。2020/01/12
rokoroko
10
上に引き続き楽しんで読めた。江戸物は似たような感じになりがちだと思い込んでいたけれど、違うのね2018/05/06
Ribes triste
7
最後まで面白かった。謎解きもさることながら、江戸の職人文化に造詣の深い泡坂さんが書く物語は、ワンパターンにハマらず、江戸で暮らす人々の息づかいまで感じられるようで楽しい。最終話のまさかの展開に驚かされました。2018/01/25
タリホー
5
上巻に比べるとミステリ要素が抑えられた作品が多いが、古銭や天正かるた、富くじに金魚といった風物が華を添える。人当りの良い藪医者や岡っ引きの娘、うだつが上がらない川柳の宗匠といった個性的な面々の活躍も楽しい。しかしそんな華やかな江戸も討幕軍が乗り込んでくる最終話「夢裡庵の逃走」で終焉を迎える。夢裡庵と共に去る江戸の姿が儚げで良かった。お勧めは「猿曳駒」「手相拝見」「風車」「金魚狂言」。2018/01/30