出版社内容情報
山奥の寄宿舎に集う少年少女。彼らの愛と友情、怪奇と謎に満ちたちょっと不可思議な学園小説。傑作保証!
どことも知れぬ山奥に「水光舎」は建っている。特別能力期待生と呼ばれる中高生が、各々1年の1季節だけ過ごす寄宿舎だ。種々のささやかな特殊能力を持つ子らが3ヶ月間、能力を伸ばすことに専念するのだ。植物の声が聞ける庭師少年が、挫折のはてに課題をクリアする「春」の物語。また、生徒に憑依した少女の霊を成仏させる課題を与えられた霊能者少年の「秋」の物語。成長譚、ホラー、ミステリ、友情小説……清冽な文体で紡がれる四季の物語。
【著者紹介】
1978年生まれ。岩手県立伊保内高校を卒業後、2007年『パークチルドレン』(筆名:石野文香)で小学館文庫小説賞受賞。10年『月のさなぎ』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞。他の著書に『生者の行進』がある。岩手県在住。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
★Masako★
78
★★★★ 心がほわっと温かくなるような優しさに包まれた。山奥にある寄宿舎「水光舎」。ここは動植物と交流出来たり、描いた絵に命を吹き込めたり、そんなささやかな能力を持つ少年少女が、その能力を如何に活かすか考え伸ばす場所。決められた季節のみ滞在し、18歳で卒業する。季節毎に主人公が変わり、リンクしながら物語は進む。能力があるが故の悩みと生きづらさ、葛藤が、丁寧な心理描写ですっと心に入り込む。彼らに寄り添うように描かれる四季折々の自然の描写が、とにかく美しい。光り輝く湖面のように、希望と癒しをくれる本♪2021/05/17
ひめありす@灯れ松明の火
68
小川の上で乱反射した春の陽ざし。ポカポカの光が強張る肩と心を解く。ホースの先から迸った無数の雫の中には小さな夏と太陽を閉じ込めた。秋霜は木の葉彩る繊細なレース。白露と秋霜を散らばせたドレスで月の夜に貴方と踊り明かしたいの。冬は水も光も凍りつく。つらら、雪、氷。寒いからあなた達が温かいなんて想わない。光も閉じ込めて居るから。心が繋がって居るから温かいの。水は光を孕み、光は水を移ろわせる。有りふれているけれど、きらめいて愛おしいもの。永遠に続きそうで一瞬の季節。胸に抱きしめたら、自信を持って次のあなたに託すの2015/02/28
優希
63
ちょっと不思議な能力を持つ人たちの連作短編集です。風変わりな才能を持て余していても受け入れて伸ばしてくれる水光舎が居場所なんですね。やわらかい光が差し込む水光舎で(春)(夏)(秋)(冬)たちの生活がじんわりと染み入ってきました。絵のような美しさがあり、爽やかな感じがします。怯える夜があっても、自分を手に入れられるのではないかと思えるのがいいですよね。水光舎はいつまでも彼らの居場所であって欲しいです。2014/10/17
エンリケ
45
舞台設定の魅力だけでも読む価値有り。物語は細やかな超能力を扱うが、青春群像劇としてとびきりの作品。一年に三ヶ月だけ交代で寄宿する超能力を伸ばす学校。生徒達は自分の力を磨き、人に役立つ仕事を模索する。ひとつのテーマを四季ごとにリレー形式で継承していくカリキュラム。この作者の設定した教育システムは誠に理にかなっていて感服。生徒達が壁にぶつかり、それを乗り越えて行く過程はお約束とは言えやはり感動する。彼らの懸命に課題をこなそうとする態度が好ましい。最後の命懸けで友人を助けようとする少女の勇気が特に眩しかった。2015/03/16
はつばあば
43
岩手の気候風土は、宮沢賢治やこの作家のような方を産む土壌があるのだろう。人は互いを尊重し、自然をも慈しまねばならない。様々な能力の芽を持つ子供達が、四季を通じて成長しあう水光舎。大人の嫌な思惑の入らない(・・戦時中の日本にもアメリカでもあった特殊能力機関のような)ファンタジーな物語りでよかった。。子供達が傷つきながらも、素直に豊かな感性を磨きながら伸びていく様が清々しい。瑞々しさに枯れた今、清涼飲料水のようなこの方の本で渇きを潤したい。2015/03/03