内容説明
金が、金のあるところにしか回らない。盗人も増え、百姓が逃散する時代、河井田藩家中の権力争いに巻き込まれ、武士を捨てた飴売り三左。顔はいかついが、笑顔は天下一品、人の心を溶かす。腕が立ち、肝も据わっている。けんかの仲裁から殺人事件の下手人捜しまで、鮮やかに処理。今日も江戸の町に、辻から辻へ、飴売り三左の声が響く。抑制された哀感が胸を打つ遺作。
著者等紹介
北重人[キタシゲト]
1948年、山形県酒田市生まれ。1999年「超高層に懸かる月と、骨と」で第38回オール讀物推理小説新人賞を受賞。2004年、松本清張賞最終候補作『夏の椿』でデビュー。07年『蒼火』で第9回大藪春彦賞を受賞。08年『月芝居』が第21回山本周五郎賞の候補作に、09年『汐のなごり』が第140回直木賞の候補作となる。09年8月、惜しまれつつ、急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
じゅん兄
13
5つの短編集、丁寧でどこか切ない文章が印象的。かつて武士だった飴売りの三左衛門と一緒に暮らす小紋、わけがありそうな二人。江戸を舞台に事件が起き、そのたびに三左衛門がやさしさと度胸で解決していく。5話目「火の闇」で三左衛門が武士を辞め小紋と暮らすようになったいきさつが語られる。読み終わって表紙の絵を見た時、胸にこみ上げてくるものがあった。作者は8冊の小説を残して3年前に逝去、「火の闇」が絶筆とか、三左衛門の活躍がもう読めないのが残念。2012/10/28
カモノハシZOO
6
読ませるねいっていう感じ。北さんの作品はそんなにないので早く読まないとなくなっちゃう。取り敢えずブックオフで探そう。あと、火の闇がなぜ最後かその構成がよくわからない。北さんの急逝の影響なんだろうな、致し方なしか。2021/02/14
やぶチャン
2
珠玉の作品集。急逝が惜しまれます★4.82016/03/01
gachi_folk
2
北重人の遺作。藤沢周平と同じ山形出身の作家だが、出身地だけでは無く市井の暮らしぶりの描写が藤沢作品と同様に心地よい。続編が読みたかった。残念でならない。2012/11/05
酔ちゃん
1
★★★★初めの4話は短編で飴売り三左が持ち込まれた事件を解決する話で今ひとつだったが、最後の中編「火の闇」は時間が巻き戻って土屋三左衛門が武士をやめて飴売りになった経緯が語られる、これは読みごたえがあってぐいぐい引き込まれた。 国に残したお美代をどうするのか、魅力的な女性小紋の活躍はなど続編に期待したいところだが北重人氏はこの作品を書き終えて逝去されたしまったという。 何とも残念、葉室麟氏も佐藤雅美氏も亡くなられて淋しい限りです。2022/08/02