内容説明
勘定方の島田を斬った、羽州佐竹藩剣術指南役の小寺半兵衛。御家の事情も絡み、国許で討たれるわけにはいかぬ半兵衛は、命がけで惚れていながらも敵となってしまった島田の娘多恵に「江戸にて待つ」と人伝てに伝えて出奔した。今では、多恵が迷わぬよう、奥州道出口に建つ浅草寺奥山に看板「羽州浪人小寺半兵衛」を掲げ、香具師として糊口を凌ぎながら、討たれる機会を待ち望むが―。
著者等紹介
花家圭太郎[ハナヤケイタロウ]
1946年、秋田県生まれ。明治大学文学部仏文科卒業。フリーライターとして活躍後、98年に『暴れ影法師』(集英社)でデビュー。緻密な考証と壮大な構想、花鳥風月を詠うような筆致で、現在もっとも注目されている時代小説作家のひとり(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タツ フカガワ
24
再読。羽州佐竹藩剣術指南役の小寺半兵衛は勘定方で許嫁多恵の父を斬り、いまは江戸の浅草奥山で香具師となって糊口をしのいでいる。多恵が仇討に来るはずで、そのときは討たれようという思いでいた。藤沢周平『用心棒日月抄』を想起させる始まりですけれど、人助けに奔走する姿は青江又八郎より純朴そう。連作5話の中では、悪意ある嘘で家族を失った老武士の最期が切ない「本所の隠居」が良かった。2021/09/01
退院した雨巫女。
10
半兵衛さんが、すごく素敵。多恵さんが羨ましい。2011/02/14
あかんべ
9
5年前の作品だが続きが読みたい。半兵衛が好き。いつも死を意識して生きるってどんなだろう。このまま多恵が現れない気もするが、現れて決着を見てみたい。2015/02/16
ぶーにゃん@積ん読本解消中
2
許嫁の父を斬り殺してしまい敵持ちとなってしまった半兵衛が敵討ちにくる許嫁の多恵に斬られるのうらうらと待っている間に起こる人情劇がいいですね。デビュー作の花の小十郎シリーズと比べて破天荒さがなくなりしっとりとした市井の人々との暮らしと人情がきめ細やかに書かれていておもしろかった。2011/05/25
m-t
1
訳あって許婚の父親を切り脱藩した男が、 許婚が敵討ちに現れるのを待つために、 どうどうと名前を掲げて始めた 香具師の仕事。 人情に暑いし、曲がったことを見過ごせないために、 許婚に渡すための命を掛けて、様々な事件に関わっていく。 腰の剣は竹光だけれども、柔術の腕もある。 日々の暮らしは素人の投げた出刃包丁を受ける見世物。 女に好かれるけれど、許婚一筋な男の行く末は。 シリーズ化されるのかなぁ。2010/10/02