内容説明
突然かかってきた一本の電話。亡くなった兄・直道が生前入信していた新興宗教について聞きたいという。脳腫瘍で先が長くないと悟った彼は宗教に救いを求めたのだ。死の数日前、兄は僕に教団が冷凍睡眠の研究を進めていたことを明かしたが…(表題作)。人は永遠の生命を得られるのか。気鋭が描くサイエンスミステリー集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジンベエ親分
38
冷凍睡眠をネタにした短編集。短編なのにメモを取りながらでないと話についていけないほどの凝った構成は「素顔に戻る朝」など数編で顕著。この短編は有沢果歩という特異なキャラが面白い。二転三転する真相もアクロバティックだが、最後の一文を読んでもまだ他に解釈の余地がありそうで次の短編になかなか進めなかった。その最後の一文もなかなか味があって意味深で面白い。「凍りついた記憶」も面白い。最後の2行を読んでウギャッと悲鳴を上げてしまった(笑) 受け身で読んでもつまらないだろうから読み手は選びそうだけど、この作家は好き。2017/10/25
ホレイシア
7
冷凍睡眠は可能か?というテーマでのオムニバス。個人的にタイムリーなような、読まなきゃよかったような複雑な気分。私は冬眠してまで長生きしたいとは思わないが、目の前で若い身内が望みのない治療に苦しんでいるのを見れば、こういう方法があるなら試したいと思ってしまう。人間て勝手だ。2011/08/23
まつじん
5
冷凍睡眠という実現しそうで技術と倫理の両面から実現が難しい技術をネタにした連作短編集です。 技術的には冷凍したら細胞が損なわれる、という単純な問題。脳だけ冷凍しても記憶が失われる・・・からクローン人間まで話が広がります。倫理的には死ぬ前に冷凍保存するのは殺人にあたるからと実験が地下に潜っている、そこから詐欺事件が起こります。 そんな一種の不老不死、やら難病からの逃避やらで生まれる人間模様をおかしく悲しく描いている、んですよね。それぞれのエピソードは長編に拡大しても面白そうだ。2007/09/21
yakinori
3
不治の病にかかった人間を生きたまま冷凍して、高度に医療技術が発達した未来に目覚めさせ病を治す。とある組織がその技術を研究していて、どうやら実現できるようになったらしい。それが事実か事実でないのか定かではない、というところがこの短編集のキーポイント。コールドスリープを題材にしながらもSFという感じではない。なかなか興味深いテーマで面白いんだけどちょっと流れがワンパターンな感じもした。他の方の感想にもあったけどちょっと人間関係が複雑過ぎてわからなくなるものもある。2025/02/22
yamakujira
3
現在の医療技術では治療できない病気を未来の医療に託すため、患者を死ぬ前に保存する冷凍睡眠の技術が開発されたという噂に踊らされる人々をえがく7編の連作短編集。解凍技術の確認のために窃盗を強いられたり、噂を利用して殺人を隠蔽しようとしたり、指名手配から逃れるために被験者になったり、実像の見えない冷凍睡眠が人を狂わせる。次第に怪しい背景が明らかになるにつれて、いかにもありそうな話だとリアリティーが強まるのは皮肉だな。冷凍睡眠って嘘だとしても、本人を騙せば安楽死と同じだから悪くないかもね。 (★★★☆☆)2019/07/05
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