内容説明
駿河大納言忠長の御前で行われた十一番の真剣試合。城内が腥風悽愴と荒ぶその日、武芸者のだれもが破滅の淵へと疾走し、血の海に斃れていった。日暮れ、人去った城内は寂として声なく、人心の倦厭の気のみ残されていたという…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
70
三代将軍家光の弟忠長の面前で行われた、まさに血を血で洗う真剣十一番勝負を描いた時代小説。信頼できる当時の書物から作品に仕立てた体ですが、どうやら全くの創作のようですね。異才の剣豪たちが命のやり取りをするに至った経緯から、その勝負の結末まで、読み進めるうちにお腹いっぱいです。登場人物の背景、試合の形式がバラエティに富んでいるので、勝負がパターン化されていても飽きることはありません。一方に肩入れすることは必定なので、勝負の行く末が気になって一気読みです。数人の生き残りを残し、その後日談は、無情ともいえますか。2023/02/14
k5
70
初夏の時代小説フェア①。そして忠長シリーズ。やはり『シグルイ』というマンガが衝撃だった世代にとって、一度は読むべき時代小説。対抗戦形式という40代のおっさんがジャンプに刷り込まれまくった形式美をこれほどまでに美しく残酷に描いているというだけで推せます。あとは最近、古い時代小説読んでますが、現代ではありえない欲望への忠実感が美しすぎる。美女に焦がれて命を捨てるとか、美男に惚れて堕ちるとかTKGのごときシンプルな旨みです。2022/05/25
まるほ
32
マンガ『シグルイ』の原作本ということで読んでみた。▼『シグルイ』の話は第1試合を基にしており、この本ではたった30ページ程しかない。マンガ版は原作をかなりデフォルメしています。▼本作品は、御前試合全11番勝負の全てが描かれる。作者は“残酷もの”で著名とのことだが、本作品からは残酷さより、むしろ封建制度下でのやるせなさ、無残さ、空しさを強く感じさせられる。▼とにかくバタバタと人が死んでいく。最終章『剣士凡て斃る』まで読了すると、ひとしお“空しさ”を感じた。▼残りの試合も“シグルイ版”で読みたいな…。2018/11/17
緋莢
31
山口貴由『シグルイ』の原作である「無明逆流れ」含む12編が収録されています。あの『シグルイ』の原作だし、作者は〝残酷もの”と呼ばれる作品を書いていたという事で身構えて読み始めたのですが、人はガンガン死にますが、特段、〝残酷”だと感じるようなものはなく、肩透かしをくらいました。そういう描写が得意ではないので、ホッとしたぐらい。だからといって、物語の面白さが無かったという訳ではありません(続く2018/09/10
千住林太郎
25
凄惨すぎるゆえに歴史に残らなかった駿河城での真剣試合を秘史料をもとに再現した体のドキュメンタリータッチの小説である。 勝負のほとんどが女性を巡る争いを原因としているきらいはある。しかし、本作が月刊誌の連載をまとめたものである以上、読者の興味を惹く仕掛けとして仕方ない所はある。 漫画『シグルイ』の原作でもあるものの、ドライな文体のため、救いのない結末ではあるが読後感も漫画ほどは悪くない。各話の剣豪が繰り出す剣法はどれも独創的な強さで描かれていて飽きさせなかった。漫画と読み比べるのも一興である。2022/08/17
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- 和書
- 武田信重 中世武士選書