内容説明
押し込み強盗で金を独り占めした徳蔵は、伊那谷に逃げ込み廃寺に住みついた。山中で仔犬を拾いゴロと名づける。肉食しか受けつけぬ凶相の野犬だった。ある晩秋の夜、ゴロは凄まじい咆哮を残し行方を断つ。二ヵ月後、木曾山中で日本狼が出現し、姉を殺された猟師が追跡中との新聞記事が出た。ゴロに違いない。徳蔵は木曾へ向かう。一方、廃寺では復讐に現れた強盗仲間が村人に暴虐の限りを尽くしていた…。
著者等紹介
西村寿行[ニシムラジュコウ]
1930年、香川県生まれ
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感想・レビュー
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Taito Alkara
8
陸空海の生き物と人間のドラマをあつかった短編集。時代は明治とか昭和初期とか。厳しかったかもしれないけど、自然と人が近かったように感じる。2016/05/05
小物M2
2
素晴らしい。本作はハードボイルドでありながらもノワール。そして、文学である。人間と動物と自然。命の迫力。「海の修羅王」「犬鷲」が白眉。2023/08/24
slowbird
1
1969年の処女作「犬鷲」を含む作者初期の動物もの作品集。日本アルプスふもとの村に現われた日本狼、八丈島の岬に住み着いたお化け石鯛、山村の猟師を嘲弄するごときの雄雉、あるいは巨大な犬鷲。荒ぶる自然に抗して生きてきた人たちの生存あるいは精神をも危うくする脅威というだけでない、何か魂を揺さぶる生き物達。そして戦う人間達。やはり彼らけもの達は、神なのだろうか。 「海の宴」は少し毛色が変わって、瀬戸内海の小島に集まる大量の鯔漁に憑かれた男を描く。たとえ破滅が予見できても惹き付けられてやまない豊穣さの魔力だ。2024/11/09
sunflower
1
THE男の物語。男にとっての願望、自身より大きなものに挑む。老いてもなお衰えず、体格差などものともせずに闘いに挑む姿は他人から見ると狂気じみて映るが、とうの本人も自身が突き進む道に狂気を感じながらも止める事が出来ない。次第に取り憑かれたように自身の世界へとハマって、魅了されていく。人様に映る姿がどんな姿であれ、あくまでも己の決めた道に進む姿はカッコよくさえ見えてくる。 2022/01/05
谷崎潤子
0
読んだ本に登録していなかったので、改めて登録。熊谷達也の「漂泊の牙」を読み終わったところで、この本の存在を思い出した。最後のニホンオオカミの話だったかな。誇り高く美しい野生の存在は山屋には堪らない。怖いけど、恐ろしいけど、美しい。絶滅してしまったことは山の神様が消えてしまったようにも感じてしまう。人間は罪深いなあ。2011/08/25