内容説明
大学1年の夏、杜崎拓は故郷高知に帰省した。親友・松野と里伽子のわだかまりも解け、気分よく東京に戻った拓の部屋に、年上の女性、津村知沙が入り込み泥酔し寝ていた。「その年上の女、たたるぞ」という松野の言葉が拓の脳裏に甦る。不倫の恋に傷ついた知沙。離婚した父とその再婚相手との間で傷つく里伽子。どうしたら人は人を守れるのだろう?さまざまな思いと痛みが交錯しながら拓は東京ではじめての冬を迎える―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
129
前作が女性をめぐる男同士の関係をフォーカスしたのに対し、今回はその逆。里伽子と知沙に都合よく駆り出されて損な役回りの拓。喧嘩しても虚勢を張る里伽子の健気さが好きな彼が田坂や大沢に執拗にエンパシーするのもわかる気も。部を弁えつつここぞという時に威勢よく出るのが拓の魅力。道義的問題に当惑しつつどんなアイも尊重したいジレンマから啖呵に繋げるのが巧い。女性2人にもひと山越えさせつつ、彼を一層いい男にしたい目論みで後日談は見事に後編と化した。「I」と「愛」を求めて狂奔する物質社会に素朴なイメージで回答するのが著者。2022/07/20
遥かなる想い
87
映画『海がきこえる』の続編。年上の女性津村知沙の人物造形がよく振りまわされる主人公 杜崎拓の戸惑いもうまく描けていると思う。逆に映画ではいきいきとしていた里伽子さんが目立たなくなってしまったが..いかにもという さわやかな青春小説。2011/07/31
chiru
77
『海がきこえる』の続編。 高校生から大学生になった二人の距離感は、友人か恋人かわからない微妙な関係。 ふたりのラブストーリーというより、先輩の不倫や、父親の再婚問題など、問題を抱える人間関係を通して大人に成長する物語でもあると思う。 お互いの気持を確認しあわなくても、通じ合ってるふたりに、暖かい気持ちになれました。 ★42018/05/16
しゅわ
61
氷室冴子さん勝手に再読祭りの第25弾は『海がきこえる』の続編。今作はほぼリアルタイムに進行。離婚した父とその再婚相手との間で傷つきながらも相変わらず気まぐれな里伽子と不毛な恋愛から抜け出せない知沙。二人の女性に翻弄されながらも成長する拓。いわゆる不倫がどうしてもダメで、知沙や大沢さん、美香さんとその擁護をする親友に共感できなかったけど…淡々と進んでゆく物語は、決してうまくゆかないリアルさと想像していた以上のドロドロとともに…なぜか?懐かしい感じ。個人的には松野くんがほとんど出てこなかったのが残念です。2014/06/18
たか
27
『海が聞こえる』の続編。前作はジブリの映画で鑑賞したが、それぞれ違った良さがある。内容も、前作の高校編に対して、今回は大学編となっており、氷室冴子の他の作品に比べて、少し大人っぽい仕上がりになっている。B評価2017/11/27