内容説明
会社と自宅の往復、趣味はプラモデル作り。ごく普通のサラリーマン・藤原広太郎の人生はある日一変した。満員電車の中、鮮やかな手さばきでスリが財布を抜き取った場面を目撃した瞬間、なんともいえぬ快感を覚えたのだ。その快感が忘れられず、自らも手をそめることに。ついに捕まった藤原は会社をクビになり、乗り降り自由のフリー切符を握りしめて街を歩き回るが…。表題作他、珠玉のミステリー作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
46
〔再読〕八つの短編集。トラベルミステリのイメージが在る作者ですが、ミステリというより不思議な世界の話に感じられる、たいへん珍しい作品です。「夜の殺人者」には十津川警部らが登場しますが、使われたトリックを成功させる為の偽装が、犯人にとって犯罪を立証してしまうという作品です。「行先のない切符」は少しやるせなく思って仕舞いますが、スリに憧れを持った為に仕事を無くし、妻から裏切られ殺されてしまう主人公が、最期の瞬間笑ったのは何故か。西村京太郎氏は、こんな洒落たミステリも書くんだと、認識を新たにする作品になります。2015/09/05
エヌ氏の部屋でノックの音が・・・
3
1999年 4月15日 初版2015/03/21
波照間ヤギ子
2
行先のない切符、おすすめ2015/06/02
沖川あこ
1
西村京太郎はこういう話も書けるのか・・・面白かった。2014/10/19
浅木原
0
『南神威島』に表題作と「夜の殺人者」「鳩」の計3編を追加した8編。追加分ではスリの快楽に目覚めてしまったサラリーマンの数奇な運命を描く表題作が一番かな。皮肉な結末が印象的な佳作。他2編はまあ水準やや上ぐらいの初期西村短編。せっかくなので『南神威島』収録作も再読したけど、やっぱり「南神威島」「カードの城」の2編がいいですね。他3編も改めて読むと若い頃の西村京太郎の、人間を描こう、という気恥ずかしいぐらいの気負いが逆に好ましい印象を与える佳品。2016/05/07