内容説明
湯につかる。ひたすらつかる。温泉は再生の営みであり、甦りの行為である。ここには、地位も財産も権威も何もない並外れの公平と自由な世界がある。湯の中にとどまっている間の、あの中空に浮いたような、優しく柔らかな母胎に帰ったような感覚…三十代半ばに湯道楽の味を知って以来二十年。ドイツ文学の泰斗が温泉にまつわる面白さ、不思議さ、おおらかさを気まま旅の醍醐味と共に描いたホノボノ旅日記。
目次
会津の雨―木賊温泉(福島県)
忠治も来た―鳩ノ湯(群馬県)
小さな町―矢野温泉(広島県)
五七調の旅―鹿沢温泉(群馬県)
ふるさと再訪―塩田温泉(兵庫県)
湯の町エレジー―籠坊温泉(兵庫県)
眠る町―春日温泉(長野県)
なおしてくるぞと…―寒の地獄(大分県)
片目の魚―温湯温泉(青森県)
夢を売る―湯涌温泉(石川県)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クジラ
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オジサンがひたすら温泉に入りに行くお話。ただそれだけ。でも、自分もオジサンに近い人間だからか、自分も温泉の旅に出た気分になれる。文体が全体的に芒洋としていて、それも温泉気分とマッチする。2012/02/09
kinta
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紀行文は何を主題に持ってくるかによって大いに趣が変わるが、先生の博覧強記からは何故か旅情というものの本質をふっと嗅ぎ分けた。これが知的な旅の一つなのかしらん。温泉に入ったらその後下着は付けるべからず、というクダリにはある種納得するものの、大笑い。センセ、奔放すぎますぜ。2019/11/12