内容説明
1960年代のチリ。村はずれの高台に住む有名な詩人、パブロ・ネルーダ宛て郵便物専門の配達人となった漁師の息子マリオ。入江近くの酒場でベアトリスに一目惚れしたマリオは彼女に捧げる詩を書いてほしいと詩人に頼む―。素朴な青年が、詩人との交流をきっかけに愛を、そして自分を発見していく。ノーベル文学賞を受賞した実在の詩人のエピソードをもとに、アントニオ・スカルメタが書き上げた感動の一篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
31
何と言っても主役を演じたトロイージの急死が衝撃だった。そして抜けるように青い空と白い家々・・あぁ~~地中海!なのに原作を読んでびっくり!主軸の幾つかは作り変えられている。やけに年取った花婿❓と思ったのも道理、ホントは17歳の青年配達夫。トロイージは40歳!地中海が舞台ではなく、アジェンデ政権にあえぐチリが舞台、でネルーダは死んでしまう。とは言え尾崎氏の言うようにネルーダとの友情で培っていく詩心の芽生え、ポスティーノ=郵便配達夫の職務に身も心も傾けたマリオの人格そのものに醍醐味を味わえたことは確か。2015/07/06
ぱせり
8
ネルーダに郵便を配達するマルコは怠け者で軽い男だったが、一途な男でもあった。マルコが、村に帰れないネルーダのために(仕事をサボって)ソニーのテープレコーダで、次々に録音した村の音が好き。黒いフォードの男が、笑うセールスマンみたいで不気味で怖かった。2019/12/05
どくばり・あり
7
チリの詩人パブロ・ネルーダと、彼専門の郵便配達を務める漁師の息子マリオの交流を通して、激動の近代化を振り返る物語。古くから信頼している知人が「泣けた」と紹介してくれたので読んでみた。端正な物語なので2時間ほどであっさり読め、「じゃあ行こ」と自転車に乗って走りだした途端、喉に塊がこみ上げた。 それは多分、喜怒哀楽も抗争も性生活もあけすけに公開し、共有する登場人物たちに比べ、自分は半分も生きてないと思い当たったからだろう。今の日本を統べるただ二つの倫理、「普通でありたい」「他人に迷惑をかけたくない」がために。2012/06/13
鼻毛カッター
3
映画版ではイタリア(南部)が舞台だが、原作のこの本ではチリが舞台、当時のチリの政治情勢(アジェンデ政権誕生~クーデター)を色濃く反映している。映画のほうを先に見ていたので、主人公のマリオを脳内では冴えないオッサンに変換してしまって、その都度修正するのが大変だった(原作では17歳)2010/03/02
BlurMatsuo
1
チリの国民的詩人パブロ・ネルーダと、彼に郵便物を届ける青年マリオの成長と交流を描く。俗っぽい言い回しの会話文が続いて読み易いが、軽すぎる気がしたのも束の間、ネルーダがマリオに隠喩について教える場面はかなり示唆的で一気にこの世界観に引き込まれた。ベアトリスとの恋と共に詩にのめり込む青春、結婚を経て生活に埋没するも、パリに滞在していたネルーダからの手紙で始まる新たなやり取り、チリの政変で不穏の立ち込めるクライマックスと物語の構造も変化に富んで非常にドラマチックだった。映画は舞台を伊に移しているらしいが観たい。2024/09/26