出版社内容情報
乙川優三郎[オトカワユウザブロウ]
著・文・その他
内容説明
気がつくと、酒と女性と言葉に淫し、まだ書けることに豊かな生を見出すようになっていた。文章を磨くことは、ふさわしい言葉をみつけてふさわしい場所に置き、美しい流れを作ることであった。書くこと自体が彼の中では大いなる冒険であった。書くことへの飽くなき飢えを貫いたひとりの男の物語。
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ミスランディア本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
52
不可思議な作家乙川氏…正直文体といい男女間のあり方、内省、好みじゃない。現代作品群になってボリューム、語彙、酷似してる感なきにしも非ず。悪口言う割に年に数回は気になる。長野山奥から一旗揚げるべく上京した男。コピーライター、作詞家、そして作家に。友は更に有為転変強烈。潜熱とは物質が液体、固体に変化するに要する熱量〜男が変容を遂げていく時間、人生に於き友、得意先、女、妻娘多彩なウエーブが。氏独特の偏執的(ごめんなさい)ともいえる職人的文章や言葉はいぶし銀の域。とは言え私は、溜息付きながら…読後満喫は突出2025/07/09
タピオカ
24
初読みの作家さん。面白かった。野心を持って故郷を出て東京に出た相良と大庭。コピーライター、作詞家、小説家へ、書くことへの飽くなき希求を貫く相良と、風来坊で強がりな役者となった大庭。ふたりで夢を語った懐かしいプラザに久しぶりに訪れた相良と、想念の中の大庭の最後のシーンには胸が熱くなった。2023/03/03
hiromura
10
乙川優三郎さん、待ちに待った新作。いつもながら、どんどん読み進んでしまう。畳屋の息子が東京に出てコピーライターを目指し、叶え、やがては小説を書くようになる。若い頃にグアム島でカレーのコマーシャルの仕事を一緒にした神定トオルの訃報、西城秀樹を思い出した。2022/12/07
ジュール
9
相変わらずの乙川さんの硬質な文体には惹かれる。ベビーブーマーの世代の相良、田舎の畳職人の家を嫌い、コピーライターになる為東京に。同じく役者になる野望を持った大沢も。同郷の寺の跡継ぎの保科と反発しながら交流する。相良はコピーライターから作詞家へ。結婚もするが妻との仲は冷えていく。晩年は作家に転身。乙川さんの作品は翻訳家や装幀家にしろ職人を描くのが上手い。ただこの作品は職人の辛苦の部分がやや弱くいつのまにか主人公が成功している。そこが残念。ただ最後の保科が亡くなり実家仕舞いの辺りは胸に響く。2022/12/14
ガブリエル
6
乙川さんの洗練された文章は相変わらず心地いい。 昭和〜平成〜令和を生きた男の一生も、作者にかかるとこれほどまでにスタイリッシュで軽快になるから不思議。 人生って、作中で何度か描かれる「中央フリーウェイ」の一節のように滑走路のような道を車で飛ばしているようなものなのかもしれないなと思う。 過ぎてしまえばあっという間。 失敗も、挫折も、苦労も、風に飛ばされて後方に過ぎ去って行き、最後は夜空へと旅立つ‥‥みたいな。 そんな感傷に浸った読後。2022/11/15