内容説明
死刑制度の闇に挑んだ著者渾身の本格推理。堀田市で起きた幼女殺人事件「堀田事件」の犯人として死刑判決を受けた赤江修一。彼は無実を主張したが、控訴、上告とも棄却され、判決確定後、わずか二年で刑を執行された。それから六年後―亡き赤江に代わり再審請求中の堀田事件弁護団宛に、真犯人を名乗る「山川夏夫」から手紙が届く。さらに一年後に届いた二通目の手紙の中には、犯人のものだという毛髪が入っていた。弁護団の須永英典弁護士は手紙の差出人を突き止めるべく、新聞記者の荒木らと調査を開始する。調査が進むにつれ、日本の刑事司法の根幹を揺るがす計略が浮かび上がる…。
著者等紹介
深谷忠記[フカヤタダキ]
1943年東京都生まれ。東京大学理学部卒。82年『ハーメルンの笛を聴け』で第28回江戸川乱歩賞候補。85年『殺人ウイルスを追え』で第3回サントリーミステリー大賞佳作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
155
無実を主張するも判決からわずか2年で死刑執行された赤江。再審請求する弁護士・須永と記者・荒木の粘り強く立ち向かう姿がいい。6年後、弁護団に届いた真犯人からの手紙が意味するもの。そして、東京高検検事長殺人事件の闇。刑事たちの捜査が違う方に向かいそうになるのをハラハラしつつ、一見無関係に見える二つの事件からその根にあった人間の恐ろしさに暗澹たる思いになった。こんなことがあってはならないと思うのは私だけじゃないはず。キーマンの滝沢に共感とやるせなさを感じて、ため息と共に読了に至った。2021/09/16
モルク
114
刑務所内での死刑囚の自殺、第1発見者の刑務官の自殺からの話と、東京高検検事長の殺人事件捜査の話が交互に語られる。そこには幼女殺人事件の犯人として無実を訴えながらも死刑判決を受け、判決から2年再審請求中にもかかわらず刑が執行された「堀田事件」が深く関わってくる。冤罪と復讐が渦巻く。これで自死した刑務官の従兄滝沢は満足か?このあとどうするのか…気になる。読みたい本を書き留めたノートに何度も書いてあった本、ついに読破!2022/08/20
ゆみねこ
97
無実を主張したのに死刑判決を受け、わずか2年後に刑を執行された赤江修一。その6年後真犯人を名乗る「山川夏夫」から再審請求を行う弁護団に届いた手紙。九州の拘置所内で起きた死刑囚の自死と当直だった刑務官の自死…。後に起きた東京高検検事長殺害事件にどうつながるのか?全てが明らかになってあまりの闇の深さに呆然。冤罪は許されないしあってはならない。滝沢はこの後どういう人生を送るのだろうか?とても考えさせられる1冊。2021/12/22
mike
83
時を異にした3つの事件。1つ目は無罪を主張するも異例の速さで死刑執行が行われた件。2つ目は拘置所に収容されていた男に続いて第一発見者の刑務官も自殺した件。3つ目は元検事長が殺害された件。其々について弁護士、刑務官の従兄、刑事が調査していくうちにこれらが次第に繋がって行く。真相が見えるようでなかなか見えないもどかしさを感じた。500頁と読み応えはあったが同じ所を行ったり来たりするので、もう少し短くても良かったかな。2023/12/08
海の仙人
35
初読みの作家さん。東京高検検事長の殺人事件と死刑囚の自殺事件、刑務官の自殺事件が繋がったとき、あり得ないと思いながらも、権力と我欲に溺れた人間の怖さが浮き彫りになる。長編ですが丁寧な文章展開に迷うことなく読了できました。他の作品もぜひ読んでみたいと思います。2022/02/05