出版社内容情報
人気作家が腕によりをかけて紡いだ「とっておき」の24篇。全作品原稿用紙10枚ちょっと。5分で読めるのに忘れえぬ物語たち
内容説明
喫茶店“ゴーゴリ”の甘くないケーキ。世界の果てのコインランドリーに通うトカゲ男。映写技師にサンドイッチを届ける夜の配達人。トランプから抜け出してきたジョーカー。赤い林檎に囲まれて青いインクをつくる青年。三人の年老いた泥棒、空から落ちてきた天使、終わりの風景が見える眼鏡―。忘れられたものと、世の中の隅の方にいる人たちのお話です。小箱の中にしまってあったとっておきのお話、24ピース。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、クラット・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
526
あとがきにいう「一日の終わりの寝しなに読んでいただく短いお話」が全部で24篇。いずれも事件らしいものは何も起こらず、静かな動きのうちに、いわば淡々と物語が進行してゆく、いつもの吉田篤弘の小説。タイトルの『月とコーヒー』は、まさにこの小説集を象徴する。夜であること。光はあるが、それが柔らかくあえかであること。月の光のように。クールさも必要。読み終えたら消えて行ってもいい。印象もまた強い必要はない。否むしろ、残像だけが残るのがいいのである。振り返ってみると、登場人物たちはちょっと変わっていたな、とふと思う。2023/10/15
あや
212
24のお話がおさめられた短編集。 作者があとがきで書いているように、一日の終わりの寝しなに読むにふさわしい物語でした。 2019/04/09
リシン
169
数ヶ月かけて読了した本はこれが初めてだったな。太陽とパンではなくて月とコーヒーなの。「隣のごちそう」がお気に入り。絵のない絵本がたくさん詰まってるみたいでひとつひとつ大切に読んだ。2023/02/09
おしゃべりメガネ
165
タイトルにあるほど「月」も「コーヒー」も出てきた印象はあまり受けませんでしたが、吉田さんらしいふんわり&おっとりとしたステキな雰囲気の24作品からなるショートショートです。あとがきに作者さん本人が書かれているように'寝る前に読む'のがオススメで一話一話、ゆったり読んでくのがいいと思われます。何とも言い様のない読み心地の良さとちょっと切ない寂しさが十分味わえます。手元において寝る前に深呼吸しながら、一話だけをゆっくり&しっとり読むのが至福かもしれませんね。しかし、相変わらず吉田さんのサンドイッチ美味しそう。2022/03/20
mariya926
160
不思議な物語りたちでした。寝る前に読んで欲しい24の短編集でしたが、続きが気になる内容です。あとがきであったように「太陽とパン」が必要だけど「月とコーヒー」がないと物足りない感じで、その物足りなさに訴えかけてくるものがあります。「それからはスープのことばかり考えて暮らした」が好きな作家さんです。一番心に残っているのが「青いインク」です。唯一続いている物語で、最後に上手いこと着地しました。2020/02/02