内容説明
いなか道を村から村へ、芸を見せながら、旅してまわる男がいた。おどりをおどる熊をつれていたので、人びとは、「熊おじさん」と呼んだ。夜になると、熊おじさんは、火のそばで熊におはなしを聞かせ、角笛をふいた。角笛のこだまは、銀の玉をころがすような、澄んだ美しいメロディーをかなでた…。一生を旅に生きた男と、その無二の親友だった熊の、しみじみと心に残る物語。『タイコたたきの夢』『レクトロ物語』などで知られる、絵物語の名手ライナー・チムニクのみずみずしいデビュー作、待望の復刊。小学校低・中学年~
著者等紹介
チムニク,ライナー[チムニク,ライナー] [Zimnik,Reiner]
1930年、現在はポーランド領となっているオーバーシュレージエンに生まれる。ミュンヘンの美術学校に在学中の二十四歳の時に、デビュー作『熊とにんげん』を発表、大きな話題を呼ぶ。その後、絵物語を次々に発表。絵本作家としても活躍している。ミュンヘン在住
上田真而子[ウエダマニコ]
1930年広島生まれ。マールブルク大学で宗教美術史を学ぶ。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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seacalf
58
これは当たり。この作家さんは若くして人が惹き付けられる隠された美しさを見る目を持っている人だ。序盤から独自の世界に連れていってくれる。単に優しくて、甘くてまあるい菓子のような子供向けの児童書とは一線を画すような痛みや荒々しさもあるが、とりこにしてくれる物語。森のざわめきがぴたりととまる熊おじさんの角笛の音色。森からかえってくるこだまの澄んだ美しいメロディを、自分も聞いてみたい。年に数回、本棚から取り出して読みたくなる、そんなお話。2018/09/19
モリー
40
チムニクを追いかけている読み友さんにつられて、私も追いかけています。初めて読んだチムニクの作品が「タイコたたきの夢」で、寓意や皮肉に富んだ物語だっただけに、この物語のナイーブさに拍子抜けしたことは否めません。しかし、「熊とにんげん」はチムニクが二十四歳の、美術学校在学中に書かれた作品だと知り、納得しました。熊や子供への優しい眼差しを感じました。2019/03/23
空猫
35
動物が登場する話は泣ける。百も承知だが表紙絵に、タイトルに惹かれて、読む。大道芸人の熊おじさんと踊る熊はいつも一緒に村々を渡り歩いている。季節は巡り、自然は変わらずとも人間は機械を、コンクリートジャングルをせっせと作り出し…。そこには教訓めいた言葉はないのに人間の愚かさが滲み出て。静かでとても魅力ある、そんな一冊だった。 2022/01/24
とよぽん
32
偕成社1982年初版の方を読んだ。ライナー・チムニクの24歳デビュー作という絵本。絵も物語もとてもよかった。初めから引き込まれて、熊と熊おじさんに伴走しながら読んでいた。作者の、人間世界や社会悪への鋭いまなざし、自然や動物へのやさしいまなざしを感じた。1930年生まれ、ポーランドの人。他の絵本も読んでみたい。2019/03/09
みよちゃん
26
熊の気持ちがわかるおじさんや少年。挿し絵がとてもいい。あとがきで著者の生い立ちに衝撃を受ける。他の本を読んだ時も作品にしか目がいかなかったので、この本が先にあったことを知り、おじさん目線で読んでいたのに、熊の人間を見る本だったのだなと思って、反省した。最後の楽譜をちょっと口ずさんでみる。2018/12/29
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- 和書
- るしおる 40