出版社内容情報
これはホラーか、恋愛か。倫理は善悪では語らせない……。
『ボラード病』で話題の芥川賞作家、最新長篇。
妻が大きくなっていく。骨を軋ませ、糞尿を垂れ流し、不明瞭な言葉を発しながら。周りには我が家を監視する隣人、私事を詮索してくる同僚、言葉で殺そうとする母……。
助けは、要らない。
ひとりで介護をこなす夫の極限の日々が始まった。
【著者紹介】
1961年愛媛県生まれ。京都教育大学卒業。東京都、大阪府の高校教諭・支援学校教諭を勤めた後専業作家に。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文學界新人賞、03年「ハリガネムシ」で第192回芥川賞を受賞。他の著作に「バースト・ゾーン――爆裂地区」「ヤイトスエッド」「独居45」がある。近刊は「ボラード病」
内容説明
妻が大きくなっていく。骨を軋ませ、糞尿を垂れ流し、不明瞭な言葉を発しながら。周りには我が家を監視する隣人、私事を詮索してくる同僚、言葉で殺そうとする母…。助けは、要らない。極限の日々が始まった。倫理観を抉るのは怪物か、それとも―。
著者等紹介
吉村萬壱[ヨシムラマンイチ]
1961年愛媛県生まれ。京都教育大学卒業。東京都、大阪府の高校教諭・支援学校教諭を務めた後専業作家に。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文學界新人賞、03年「ハリガネムシ」で第129回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
170
肥大化する妻 奈緒美との日々を描いた物語である。敦子との裏切り発覚から始まる 奈緒美の巨大化は おぞましく、怖い。 「死の棘」を思わせるような 妻の壊れ方だが、ひたすら看護をする 夫の内面を 丹念に描く。 夫婦の愛憎を 強烈に描写した 印象的な作品だった。 2019/11/03
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
111
☆9.0(5点満点なのですが) 妻が、巨大化!していく。 骨を軋ませ糞尿を垂れ流し大きくなっていく。 ひとりで介護をする夫。 二人の愛にラストまで目が離せない。 妻が巨大化するという非条理を描いているが 紛れもないこれは“純愛”文学作品である。 本谷有希子の世界観がわかる方に超絶おすすめしたい。 この作品の良さがわからない輩は読書家と名乗るなかれ。 これほどまでの「傑作」が他にあるだろうか。 この本に出会えて私は本当に幸せだ。2021/05/01
優希
72
何処までも不条理の世界を感じずにはいられませんでした。骨を軋ませ、糞尿を垂れ流し、不明瞭な言葉を発しながら大きくなっていく妻・奈緒美。監視する隣人、言葉で殺す母に、ひとりで立ち向かう文行は極限の日々に身を投じていくことになります。助けはいらないかと言うように。倫理観が抉られていく恐怖、歪んだ介護の世界に匂い立つ生臭さにクラクラくるようでした。文行は奈緒美を守りたかったのでしょうか。全てから解放されたとき全てが懐かしくなっていたのには壊れた心を感じずにはいられませんでした。2014/12/18
わっぱっぱ
69
衝撃的。なのに嫌んなるくらい日常性を帯びてもいる。巨大化する妻の面倒をみる男の献身は、贖罪であり欺瞞であり自己憐憫であり、関係の崩壊を否認する行為でしかない。こんなの愛じゃない。じゃないのに、汚物にまみれた営みの中で男がほつ、と妻に感じる憐みや安堵や帰心や哀しみが無視できない温度を伝えてきて、、、ああ、愛か。やっぱり愛なのか、ちくしょう。ひろく男にとって妻(女)は化け物であり神。異形へ捧げる愛は残酷で、醜悪で不埒で不条理で愚かで身勝手で、こんなにも(単)純。愛しいと、思っちゃうじゃないか。ずるい、男って。2017/09/05
おかだ
68
進撃の巨人が文学になるとこうなるんだなぁ(嘘)…言っとくけど、小説読んでて何回もえずいたの、これが初めて。最初で最後であって欲しいわ。これマジで凄いな…開始15ページで「はよ終われ…」と思わせる小説エグい。読むの苦痛過ぎてもはや己の意地との闘い。しかもどんどん状況が酷くなる。でもこれってある種、介護の話なんだよな。極端な設定だけども、夫が妻を必死で看病する奮闘記だよ…妻が巨大化する病だけど。ラストには、あーだから巨大化したんだねぇ~なるほどねぇ~って思えるような理由付けもあり、納得…って納得できるかーい!2018/12/09
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