内容説明
第二次大戦後まもないヨーロッパで、腹話術師として旅をしていたひとりぼっちの若者フレディは、ある晩、少年の幽霊と出会った。「ぼくは戦争中、まだ生きていたころ、あなたを助けた。戦争が終わったら恩返しをする、と言ってくれたから、会いに来た」と、幽霊は言った。幽霊の名はアヴロム・アモス。ドイツのナチスの将校に殺されたのだという。この世でまだやらなければいけないことがある、それを手伝ってくれたら、腹話術の舞台を手伝う、というアヴロム・アモスの申し出に、フレディは…?幽霊と孤独な若者のあいだに育つ友情を通して、戦争の傷跡と平和な世界への希求を児童文学の名手が描く、感動の一冊。小学校中・高学年~。
著者等紹介
フライシュマン,シド[フライシュマン,シド][Fleischman,Sid]
1920‐2010。アメリカのニューヨーク州に生まれ、カリフォルニア州で育つ。高校卒業後、手品師として全米を巡業。第二次世界大戦に従軍。戦後、サンディエゴ大学で文学を学び、新聞記者などをへて作家となる。六十冊近い作品を遺した。作品に、ニューベリー賞を受賞した『身がわり王子と大どろぼう』など
野沢佳織[ノザワカオリ]
1961年生まれ。上智大学英文学科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
57
遠い国の遠い歴史にもっと触れたくて手にした、一冊。ナチスの犠牲になった少年幽霊と孤独な腹話術師フレディの物語。腹話術の手伝いを申し出た少年の目的とは…。戦争のことは終わったことにしたいフレディと 僕にとっては終わっていない、やり残したことがある、と主張する少年の対話が胸に響いた。悲しい言葉が随所に盛り込まれている中、子供らしさが見え隠れする明るさと笑いが時には救いでもあるけれどやっぱりせつない。犠牲者ひとりひとりに恐ろしい物語がある…作者あとがきと訳者あとがきまでもが、心に残る児童書だった。2016/02/15
あかは
32
半端な腹話術師フレディとナチスに殺されたユダヤ人の少年の幽霊の話。注釈も付いてるし、ナチスを知るきっかけにはいいんじゃないかな。話自体も決して暗くなく引き込まれるように読んでしまった。児童書。2016/02/09
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
30
腹話術師をしているフレディの元に突然現れた子どもの幽霊。何でもその幽霊が生きていた頃フレディを助けたことがあるという。そしてやり残したことがあるのでフレディに手伝って欲しいということでしたが・・。児童書なのでサラリと読めましたが、その背景となったユダヤ人虐殺は心が痛みます。そして町や村からユダヤ人の子どもを消す特別な日がもうけられていたという事実には愕然としました。幽霊を腹話術師にとり憑かせるという発想はなかなか斬新でした。★★★★2011/12/23
きらら@SR道東民
23
ナチスのホロコーストの犠牲となったユダヤ人の少年の幽霊が、腹話術師の若者にとりついて、ナチスに復讐しようとするお話。ナチスの行為は歴史上例を見ない残虐なもので、幽霊となった少年からも悲痛な言葉を聞かされますが、悲惨な境遇の中でも、ユーモアを失くさず、一筋の日の光を頼りに生き抜こうとした姿がありました。2014/09/05
鈴
18
きららさんご紹介。もとはホロコーストをわかりやすく息子に教えたくて紹介いただいたのだが、土壇場で怖がる息子は結局読まなかった。幽霊の男の子から語られるホロコーストの話。児童書であり、ちょっぴりユーモラスさもある物語のため、すべてが作り話のようにも感じてしまうが、毒を口に塗っての殺害法など、まだまだ知らなかったこともあり、内容は濃い。いずれまた息子本人が知りたがったときにでも。2014/09/04