内容説明
十月のある朝、ベルおばさんは姿を消した。明け方、寝床を出ると、そのままぷっつりと行方がわからなくなったのだ。それから半年、うちの隣にあるおじいちゃんの家に、ベルおばさんの息子、いとこのウッドローがひきとられてきた。わたしと同じ十二歳。ウッドローは、おもしろいお話をたくさんきかせてくれるし、人の心の動きにも敏感な、ふしぎな魅力をもつ男の子だった。ウッドローなら、ベルおばさんが消えた謎について、なにか知っているのかもしれない…。かわいらしい顔立ちと長くのばした美しい髪のせいで、本当の自分をわかってもらえないと苦しむ、父親を亡くした少女と、母親失踪の秘密を胸に抱く少年。ふたりの友情を軸に、それぞれが心に負った傷を癒していくさまを繊細に描いたニューベリー賞オナーブック。五〇年代アメリカの山間の小さな町を舞台にした感動的な物語。小学校高学年~。
著者等紹介
ホワイト,ルース[ホワイト,ルース][White,Ruth]
1942年アメリカ・バージニア州の炭鉱地帯に生まれる。学校教師、学校図書館員として二十年近くすごした後、公共図書館に勤務。バージニア州在住
光野多惠子[ミツノタエコ]
津田塾大学卒業後、15年間、舞台制作関係の仕事にたずさわったのち、翻訳家となる。中田耕治氏、坂崎麻子氏に師事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぱに
6
父を亡くした少女と母が失踪した少年が主人公。いとこ同士のふたりはそれまであまり会ったことはなかったけど仲良くなり、それぞれが心の傷を癒していく話。本筋はもちろん、話の途中途中で出てくる50年代アパラチア地方の生活風景が美しく描かれているのがとてもよかった。初めて耳にした罪食い人には驚かされたし。そのひとの本当の姿って?という点もすごく興味深かった。美しい姉と比べられる妹というのはいろんな本や映画で題材とされているけど軽々しく語られるべきじゃないなとつくづく思う。いい本だった2024/01/16
ぱせり
6
最近は、重たいYA作品ばかりを読んでいたのですが・・・この本のテーマも重いのですが、その重たさを包み込み、見守っている世界が、こんなに爽やかで美しい、ということにしみじみと幸福になりました。2009/05/26
杏子
5
これはすごいよかった!そして切なかった。大人たちの勝手な行動に左右される子どもたち・・愛情がなかったわけではない、ただ苦しみがそれより深かっただけ…というのがまた。言葉のひとつひとつに含蓄があって…。金物屋の二階に住んでるベニーさんの歌が素晴らしいし、ウッドローの語るお話はスパイスが効いててよいし、心のなかに悪夢を潜ませていた少女ジプシーが自分を表現したいと悩むところなど…数え上げられないほどの「よかった」がある。思春期を迎えた子どもたちにぜひ読んでもらいたい。2009/08/03
箱入り嫁
4
★ものごとをはっきり見ようと思ったら、心で見ることだ。 たいせつなことは、目には見えないものなんだよ。 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作『ホシの王子さま』より ☆苦しみや悲しみが少しずつ癒されていく。。。 目に見えないものの大切さ。 いっきに読みました。 いい本でした。 2011/08/27
にしき よう
3
親の心の痛みを乗り越えて自分らしさを見つけていく二人の姿がとてもたくましく、清々しかった。子どもにとって惨いニュースが続く昨今ですが、温かい大人たちが見守っていればなんとかなるかな、と私に希望をくれた一冊でした。2010/08/04
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