内容説明
音のでない呼び笛。人には聞こえないが犬には聞こえるゴールトン・ホイッスル。秋津四郎の娘良子はその超音波を捉える聴覚を持っていた。ある冬の朝、愛犬鉄を連れて散歩に出た良子は交通事故で記憶を失う。同じ日、事故現場近くで男性の他殺死体が発見された。そして数日後、良子は何者かに誘拐されてしまう。鉄とともに探索に旅立つ秋津。父と娘を結ぶのはたった一つの犬笛だけだった…父娘の絆を謳った感動の名作復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
文庫フリーク@灯れ松明の火
53
愛犬家の方でも「犬笛」ゴールトン・ホィッスルをご存じの方は少ないでしょう。音の出ない笛‐犬の訓練用の超音波を発する笛です。主人公・秋津は平凡な会社員。一人娘の良子は愛犬・鉄と散歩中、殺人現場を目撃し、ショックから心因性の部分的記憶喪失となる。殺人現場で何か重要な物を見たか、あるいは何かを預かった良子は誘拐され、もともと神経過敏だった妻は心を病み精神病院へ入院。残されたのは子犬の頃から猟犬として育てた愛犬の鉄。通常、人は2万ヘルツ以上の高音は聴くことができない。愛娘・良子は5万ヘルツまでの高音を聴く→続2013/06/10
金吾
31
主人公よりも鉄の活躍に心踊ります。きたえぬかれた犬のすごさを感じました。謎のままの部分もありましたが面白かったです。2022/12/20
Rin
24
誘拐された娘を狩猟犬であった“鉄”と共に追う。古い作品のようですが、古さを感じさせない面白さがありました。娘の高い聴力などの設定もありますが、犬笛をうまく使いながら、何度も危機に陥りそれでも執念で娘を救おうと奮起する父にページを捲る手がとまりません。また、鉄の家族を思い守ろうとする姿も犬と人の絆を強く感じさせてくれます。後半に出てくる船長もとても男気のある素晴らしい人物。映像化もされているようなので、そちらも気になります。2014/11/06
LongRide Taka
7
FBでどなたかが推奨されていて、面白うそうだから図書館で借りて読んだ。誘拐された娘を忠犬・鉄と探す主人公。犯罪者の汚名を着せられた主人公に同情し支援する人も居て読み応えもあった。悪役は暴力団のような総合商社で、ハードボイルドとは無縁の主人公の不死身さにも??だが、面白かったから許せる。そんな小説なのに読書メーターの登録数が少ないのが不思議。2023/02/07
ごとうさん
7
1本の映画を見終わったかのような読了感。殺害現場を見て記憶を無くした娘を誘拐され、猟犬として育てた「鉄」と共に娘を取り返しにゆく父親の話。北海道から関西まで娘を追いかける父親の執念と娘との信頼関係に読む手が止まらなかった。まぁ、勘で動いている割には娘の居場所がどんぴしゃりだったりするところは、ちょっとご都合主義な感じも否めませんが、それにしても「鉄」の描写がイキイキとしていてさすがに猟犬を飼育していただけあるなぁと思った。文庫では昭和57年初版、しかし決して古臭い感じはせず、とても面白く読ませてもらった。2013/07/29