内容説明
1930年代アフリカ。若きドイツ人宣教師フリートリヒは、熱病で妻を亡くし、同じ病で死に瀕している一人娘ゲルトルートを救うため、大きな町の病院を目指して、広大な川へと漕ぎ出した。やがてフリートリヒは不思議なことに気づく。立ち寄る川沿いの村人たちが次々に娘を癒してくれているようなのだ…。異文化との出会いと親子の心の絆を描いて話題を呼んだヘルマン・ケステン賞受賞作。10代から。
著者等紹介
シュルツ,ヘルマン[Schulz,Hermann]
1938年、現在のタンザニアに宣教師の息子として生まれる。ドイツのルール地方で育ち、書店で職業訓練を受けた後、鉱山で働く。その後南米・近東・アフリカ等を広く旅し、1967年からは出版社を率いる。出版人としてはアフリカ、ラテンアメリカ等の文学やノンフィクション、専門書を精力的にドイツに紹介することで知られ、近年は青少年にも大人にも楽しめる物語を書いている。他の作品に、『イスケンダー』『太陽の鳩』(共に未訳)など。ドイツ西部ヴッパータール在住
渡辺広佐[ワタナベヒロスケ]
1950年愛媛県生まれ。中央大学大学院博士課程修了。ドイツ文学者、翻訳家
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感想・レビュー
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はる
52
ハラハラする展開。1930年代のアフリカ。宣教師として従事していたドイツ人フリードリヒ。だが突然一人娘が熱病に冒され死に瀕してしまう。町の病院に向かうため、フリードリヒは娘を小舟に乗せて川へ漕ぎだした…。布教することに熱心なあまり家庭を顧みず、現地の人たちの想いや知識を軽んじてきたフリードリヒ。過酷な旅の中、現地の人の優しさに触れ次第に変わっていきます。それにしても、もし自分がこういう状況になったらと思うと、ぞっとしてしまいますね。2019/01/12
aponchan
19
息子の本棚本。帝国主義時代の大国独りよがりと人間にとって大切なことを気づかせようとしてくれる本。歴史のベースが無い人が読むとどの様に感じるか分からないが、一部、実在の人物も登場している事を鑑みると、人種的な偏見を無くす事が大事だと改めて思う。2020/11/03
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
13
自分記録用 『あなたもブックトーク 第7章 わたしの特選ブックトーク テーマ それって本当?』疑問を持つこと。『がまの油』→『あの子』→『ウーヌーグーヌーがきた!』→『ニーノックライズ 魔物のすむ山』→『ふしぎ調査隊研究レポート おばけは本当にいるの?』→『視覚ミステリーえほん』→『ズーム ZOOM』→『№6#1』→『川の上で』 1930年代、東アフリカの小さな村に住む宣教師のフリードリヒは、熱病にかかり死にそうな娘を小舟で大きな町の病院へ連れていきます。途中で会う岸辺の村の人々が看病をしてくれますが…。2020/04/08
光
9
〈再読〉自宅の本棚をぼーっと眺めていて、無意識に手に取っていた作品。 舞台は1930年代の東アフリカ。ヨーロッパ諸国がアフリカを植民地化するようになり、宣教師がキリスト教を広める動きも活発になった時代。ドイツ人宣教師のフリードリヒは、瀕死の娘を町の病院へ連れて行くため川を下り始めました。 5日という長いようで短い期間で、お互いの心の距離が心地よく変化していく様子に癒されました。そして、様々な人と出会う事により人は変わっていくのですね。凝り固まっていた心に光が射すような感覚が心地よかったです。フリー2015/04/11
まりこ
8
「癒し」は、人知を超えた何かがもたらすようだ。それを言葉で説明するのは難しく、ただ感じ、身を委ねるのみである。そんな経験をしたのは、未開のアフリカの人々を改宗し、洗礼を施すことを使命とするドイツ人宣教師フリードリヒ。熱病で妻を亡くした彼は、同じ病で瀕死の娘を救うべく、川を下り西洋式の病院をめざす。夜ごと立ち寄る村で、寝床と食事を与えられ、娘を看病してくれる村人と接し、フリードリヒに変化がおこる。その変化は劇的なものではないが、いつか大海原に注ぐ最初の一滴を思わせる。簡潔な文章。珠玉の物語。中高生に是非。2013/10/12