内容説明
森のおくに、いいにおいのくまが住んでいました。森の動物たちは、悲しいことやこまったことがあると、くまのところへでかけます。ふさふさしたくまの毛に顔をうずめ、なやみをうちあけているうちに、ふしぎなことに、きもちがおちつくのです。「くまって、いいにおい」みんながそういいました。でもくまは、みんなのなやみを聞いてばかりいるうちに、だんだんつかれてきました。「ぼくだって、ときどき元気がないのにな…。こんなにおい、なくなっちゃえばいいんだ」するとある日のこと、発明家のきつねはかせがやってきて、どんなにおいもたちどころに消える、というふしぎな薬をくれました。その薬をのんで、においを消してしまったくまは…?くまと、ちょっぴりやきもちやきのきつねの、やさしい友情の物語。小学校低・中学年~。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
73
森の動物たちの悩みや愚痴を一身に受け止める優しいくまのお話。大きくてふかふかのくまは、天日に干したお布団みたいな匂いなんじゃないかな。けれど、くまにだってつらい時もある。教え諭すのでなく、もやもやとした気持ちをそのまま投げかけるあたり、湯元香樹実さんらしさを感じた。きつねも案外いいヤツ。絵が全然きつねに見えなくて、とても人間臭い。2020/12/16
ゆうゆうpanda
30
「お日さま」「こうばしいクッキー」「夏の水たまり」「鳥のひなのにおい」お気に入りのにおいに例えられるくま。黙って話をきいてくれるくまを頼って動物達が集まってきます。自分の悩みは誰にも聞いてもらえないのに、無遠慮な仲間に疲れ果ててしまったくま。きつねの発明した薬で匂いを消してしまいます。さてさて…児童書ながら、鬱になっていく過程が描かれていると思いました。たまには自分も我が儘を言ってみるのが大事。それによって感情の摩擦が生じても構わない。一人でいるより仲間と係わっていたほうが素敵。係わらないとダメなんだね。2015/12/25
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
19
森の動物たちを癒す「いいにおい」をもつくま。でもくまだって癒されたい日がありますよね。こんな匂い無くなってしまえばいいのに、と思っていたところにきつねはかせがやってきて…。きつねはかせのくれたニオイキエールによって、みんなが「いいにおい」といっていた、くまのにおいはどうなったのでしょうか? 池袋のジュンク堂の冊子で知ったブックサンタ!紹介されている本。来年は登録しよう!2020/03/19
遠い日
16
誰かにとって誰かの存在は、かけがえのないもの。頼られすぎて疲れてしまったくま。くまに嫉妬するきつねの計略と後悔。くまの心が解放されるどころか追いつめられて行く件は、一人ぼっちでいることの功罪そのもの。きつねとのやりとりは易しい哲学のようで、日常生活に紛れ込んでいることに気づかされる。くま、自分の匂いを取り戻せて、よかったよ。2015/12/18
サルビア
13
森の奥に住んでいるクマのところに色々な動物たちが悩みを打ち明けにきます。そして最後にはクマの胸のところの毛を嗅ぎ、クマっていいにおいと言って満足して帰っていきます。けれども、クマはひっきりなしの動物たちの訪問に疲れていました。そしていいにおいがするのがいけないのだ、と思います。そこへ自称森の発明家のキツネがやってきてそのにおいをとる薬を作ると言うのです。実はキツネはクマのことが羨ましかったのです。いいにおいがなくなれば森のみんなは自分のところに来てくれると思ったのです。薬は出来てにおいは無くなるのですが…2022/07/14
-
- 電子書籍
- 天より高く 第17巻