内容説明
兄さんが事故で死に、父さんは悲しみから立ち直れない。十一歳のヘンリーは、必死で働く母さんを助けようと、自分も食料品店で働いている。あるときヘンリーは、強制収容所を生き抜いたユダヤ人のおじいさんと仲良くなった。おじいさんが、ナチスに破壊された故郷の村を甦らせようとして作っている木彫りの村を見て、ヘンリーは深く心を動かされる。だが、仕事先の食料品店の店主ヘアストンさんにそのことを話してしまった時、ヘンリーは、恐ろしい罠におちこんでしまったのだった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuichiro Komiya
14
今から思うとなんであんなことをやったんだろうと思えるような、本当に時間を止めて巻き戻したいところだが、どうしようもないので、忘れるしか仕方がない過去の行いとかあると思うが、読んでいてそれを思い出した。2017/04/11
かつみす
5
児童書ジャンルに入っているけど、どんな年代の人が読んでも心に刺さるものがあるはず。第二次大戦が終わって日が浅い時期の米国。11歳の少年は、心に傷を負ったユダヤ人男性と知り合う。この男性が丹精込めて創る〈消されてしまった生まれ故郷〉の模型に魅せられる少年。だが、アルバイト先の食料品店主は差別的な人物で、模型を壊すよう言葉巧みにそそのかす・・・。ハッピーエンドにならないけれど、最後の少年の決意で救われた気持ちになった。人の心の暗部に目を凝らす小説作りは、作者がカトリック信者であることとも関係しているだろうか。2024/07/15
みゅうの母
3
11歳の少年ヘンリーが邪悪な大人に象徴される不条理な世界に対峙する物語。コーミアの作品は救いがないと聞かされていたので恐る恐る読んだけれど、ほのかな希望が感じられてよかった。ちょっと長めの短編という感じのボリューム感も若い読者向き。2019/11/17
みーさん
2
衝撃を受けた。すごい。どうなるんだろうとどんどん読み進んだ、内容の濃さに対して字数は少なくあっという間に読めた。あとがきによるとこれまでのコーミアの作品は救いのないものが多かったらしい。読む人によって感じ方は違うと思うが私はこの作品には救いがあると思う。2017/12/11
のんたろう
1
まっすぐな11歳の少年が初めて出会う悪意。その真意に気づいた時の衝撃。一度はその悪意にからめとられた少年が、自分自身の良心の最後のとりでを守る。親はみな、わが子にはこのような悪意に満ちたものには出会わずに過ごして欲しいと願うと思うが、きっとそうはいかないのだ。そんなとき、この少年ヘンリーのように自分のとりでを守る強さを持ちますように。訳者のあとがきも、子供たちへの思いがあふれていてよかった。2017/11/11
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