弟の戦争

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  • サイズ B6判/ページ数 172p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784198603991
  • NDC分類 K933
  • Cコード C8097

内容説明

ぼくの弟フィギスは、心の優しい子だった。弱っている動物や飢えた難民の子どもの写真なんか見ると、まるでとりつかれたみたいになって、「たすけてやってよ」って言う。人の気持ちを読みとる不思議な力も持っている。そんな弟が、ある時奇妙な言葉をしゃべりだし、「自分はイラク軍の少年兵だ」と言い始めた。フィギスは12歳。1990年、湾岸戦争が始まった夏のことだった…。弟思いの15歳の兄が、弟を襲った不思議な事件を語る、迫力ある物語。イギリスで子どもの読者が選ぶ賞を複数受賞、ヨーロッパ各国でも話題を呼んだ作品。シェフィールド児童文学賞受賞、ランカシャー州児童書賞第1位、イギリス児童書連盟賞部門賞受賞、カーネギー賞特別推薦、ウィットブレッド賞推薦。小学校中・高学年~。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chiru

87
1ページずつ、言葉をかみしめるように読んだ児童書。 原題は『Gulf(湾・隔たり・深淵)』で、湾岸戦争と人種間の隔たりの両方を指してるように思う。 湾岸戦争がはじまると同時に、少年の身体にイラク兵の少年が共存してしまう。 テレビで眺める戦争、自国に都合のいい映像だけのニュース、その溝に橋をかけようとする少年。 アラブ人医師の受ける人種差別を織り交ぜ、日常の中にも存在する見えない戦争を描きだす。 物事の捉え方は視点によって変わることを『共存』という形で表す着想が素晴らしかったです。 ★5 2018/06/02

NAO

81
中東の雲行きがまたなんだか少し怪しくなってきている中、気になって再読。感受性の強い弟にイラクの少年兵士の生霊が取りついたという形で、湾岸戦争の悲惨さが語られている。平和なイギリスで戦争の真っただ中にいるかのように振舞う弟はあまりにも異様だが、その異様さが、かえってその戦争の悲惨さ異常さを際立たせている。連合国軍側から語られることだけが真実ではないという重み。2019/06/16

zero1

76
戦争は遠くで起きている【他人事】。他人の痛みを感じなくて構わない?【自分の事】として意識しない危うさを描く。90年に始まった湾岸戦争。イラクがクウェートに侵攻。そんな中、英国に住むアンディ(フィギス)の様子がおかしい。兄の目から見た弟という視点で話は進む。精神科医と差別、戦争の善悪など児童書とは思えない内容。✴️明日から8月。猛暑の中、せめて今は戦争について考えたい。原題は【Gulf】。これは単に湾岸地域を指すのではない。読めば分かる。📚️本書を紹介してくれた読友さんに感謝。【良い戦争なんてない】2023/07/31

アナーキー靴下

76
『かかし』が傑作だった著者、他作品も傑作揃いと聞き手に取る。本作は著者が湾岸戦争のあり方に激しい怒りを覚え書き上げたそうだ。私は当時13歳、主人公兄弟とほとんど変わらない。訳者は「スポーツの実況中継のように連日テレビに映し出された戦争」と書くが、そこまで鮮明には覚えていない。著者の怒りは、良い戦争、正しい戦争として、娯楽的に消費されたことだけでなく、テレビの向こうの出来事であると、容易に戦争から目を背けられることへも向けられていたのではないだろうか。テレビのスイッチを切るようには逃れられない物語を通して。2023/06/23

chimako

75
僕の弟フィギス(アンディ)は小さな頃からおかしな夢をみた。遠くのことがわかる夢。12歳のフィギスの魂が飛んでいったのは湾岸戦争真っ只中のイラン。アラビア語で話すフィギスはすでに少年兵が“ラティーフ”になってしまっていた。戦争のありのままを見て時々こちらに帰ってくる。ぐったりと疲れて。今現在この時刻にも世界のどこかに“ラティーフ”はいる。銃を構え、間断無く周囲を伺い、命をかける少年たち。本来ありのままを見て子どもたちを守るのは我々大人の役目。ラティーフをかわいそうなフィギスをこれ以上増やさないために。2015/02/20

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