内容説明
火山の噴火を思わせるように紫紺の空を茜に染めて、山上の城が燃えあがった。その紅蓮舌に舐めまわされる本丸を、足利義藤(のちの義輝)は茫然と見上げていた。弱冠十二歳の征夷大将軍であった。戦乱の中に生をうけ、何度焼失の憂き目を見てきたことであろう。父義晴もまた幼少より流浪の辛酸をなめてきた。数々の内訌に巻き込まれ、将軍足利家の権威は一顧だにされぬ世を迎えていた。この勝軍山城も幕府管領の細川六郎晴元との仲違えから始まった。乱世にあって己は何に生きるか。悲運の将軍足利義輝の生涯を描く秀作。
火山の噴火を思わせるように紫紺の空を茜に染めて、山上の城が燃えあがった。その紅蓮舌に舐めまわされる本丸を、足利義藤(のちの義輝)は茫然と見上げていた。弱冠十二歳の征夷大将軍であった。戦乱の中に生をうけ、何度焼失の憂き目を見てきたことであろう。父義晴もまた幼少より流浪の辛酸をなめてきた。数々の内訌に巻き込まれ、将軍足利家の権威は一顧だにされぬ世を迎えていた。この勝軍山城も幕府管領の細川六郎晴元との仲違えから始まった。乱世にあって己は何に生きるか。悲運の将軍足利義輝の生涯を描く秀作。