内容説明
元治元年夏、京・祇園の料亭に集った勤皇浪士の中に、小柄で色白、剃髪頭の物静かな男がいた。河上彦斎―近藤勇、中村半次郎と並び恐れられた剣客だ。この夜の会合で、“佐久間象山を暗殺すべし”が多数を占め、ならば自分が、と彦斎は自ら決していた。宴がひけての帰途、彦斎は若い芸妓に声をかけられ、妓の自宅に誘われる。そこで彦斎は奇妙な依頼をうける…。巨匠の時代長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイキ
4
「京を去るとその足で、彦斎があの下鴨神社の社頭へ詣でたといふ説がある。あるいは今一度、何事かを神意にたしかめたかつたのだらう。彦斎の令孫河上利治氏に、筆者はこの説の由来を糺し、/〈もしかすれば肥後へ還らず、桂小五郎を斬りに東へ下るべきかどうかを、占つたのではないんですか〉/と尋ねた。/利治氏は、/〈小説家は無茶を言ふもんですな〉/失笑して、/〈もしさうだと仮定しても、神意は、即座に下つとつたでせう〉/〈何と?〉/〈斬るな彦斎〉」(柳の糸)2019/03/24
つぶごま
2
時代の流れと立場がめまぐるしく変わる中でも信念を曲げずに不遇にも耐え、まっすぐに生きる彦斎やその生き方を健気に支える女性の姿に感動しました。筆者の書は初めてでしたが、人間臭さや不器用な生き方に光があり、人情の深さ、温かさを感じさせてくれた書でした。読めて良かったです。ありがとうございました。2024/09/21
けー
0
面白かった◎この作家さんのは初めてだったんだけど、なかなか◎ちょうど自分に合ってたかなーってカンジ。幕末のコトあんまり知らない人にはちょっとわからない部分あるかもって思ったり。またいつか読むかー!2009/07/18