内容説明
本書で文学教材の新しい教え方という問題で主として考察したことは、第一に原作者の立場と読み手の立場の関連の有無についての考え方の問題であり、第二に研究者の作品研究の立場と学習者がテクストとして読み方学習のために読む立場の混同が起こりやすいことの問題である。第三に主題読みという名の「教訓」読みに集中させることの問題である。これらの問題については、第三章までに考察して来た。そして第四章では、教材に即して具体的に考察した。第三章までに取り上げた教材と重複しないようにし、これまで学校関係の様々な研究会や研修講座で取り上げて扱ったものの中から、小説、近代詩、短歌、俳句のいくつかについて考察した。
目次
1 文学教材論の現在(文学教育論への挽歌―読解指導の復権;文学教育論の立場の読みの克服の手立て)
2 文章を読んで分かることの長所と短所(ことばの力を育てる読み方指導とは何か―文章を読んで分かることの長所と限界;文学作品は客観的に存在するのか、読み手の意識の中にあるのか―教材論との関連 ほか)
3 文学教材を読み取る立場の変化(文学の知識を与えることと文学の文章の読み方を教えること―「自ら学ぶ意欲」の育成のために;文学教材の作風の変化とそれに応じた新しい読みの視点 ほか)
4 文学教材の新しい教え方―具体的試論―(「オツベルと象」(宮沢賢治)の読み方学習とは作者の「哲学」を考えることか
「最後の箱」(中野重治)の読み方学習の言語技術とは何か ほか)
著者等紹介
渋谷孝[シブヤタカシ]
1931年(昭和6)年山形県長井市生まれ。東北大学文学部、同大学院文学研究科国語学国文学専攻(修・博課程)。新潟大学教育学部を経て、1997(平成9)年3月宮城教育大学定年退職。現在、東北文化学園大学非常勤講師。東北地区国語教育研究協議会会長
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