内容説明
遠藤周作の親友だった井上洋治神父のもとで出会い、友情を育んできた文学者と哲学者。自己愛と隣人愛、神秘と恩寵、天使と霊性、悪と聖。トマス・アクィナスから須賀敦子まで、古今東西の著作に拠って続く対話から立ち現れてくるのは「愛の言葉」の力と、キリスト教のダイナミズムである。現代日本を代表するキリスト者二人がキリスト教二千年の叡智を紐解き、今の我々の諸問題を照射する一冊。
目次
序章 キリスト教とは何か
第1章 愛
第2章 神秘
第3章 言葉
第4章 歴史
第5章 悪
第6章 聖性
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968(昭和43)年、新潟県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。「越知保夫とその時代 求道の文学」で三田文学新人賞評論部門当選、『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』で西脇順三郎学術賞、『詩集 見えない涙』で詩歌文学館賞、『小林秀雄 美しい花』で角川財団学芸賞と蓮如賞を受賞。「読むと書く」主宰
山本芳久[ヤマモトヨシヒサ]
1973(昭和48)年、神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学。2018年『トマス・アクィナス 理性と神秘』でサントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Francis
11
著者の山本芳久、若松英輔両氏ともカトリック信徒。特に山本先生はNHK文化センター「使徒言行録を読む」「創世記を読む」の講師でもあり、その学識と信仰には敬服しております。様々な論点から対話が重ねられ、どれも面白い。日本ではまだキリスト教の歩みがまだ100年に過ぎないのだから、むしろこれからに可能性がある、あるいは現代は聖性を取り戻すべきである、と言う言葉に強く惹かれるものがあった。何度でも読みたい本であり、私のカトリック信仰を深める上で大変参考になる本である。2023/06/30
よしくん
4
これまで西洋哲学を読んで来た中で、なんか腑に落ちないなぁと思って来た事が大体書いてある事に驚いた。受肉の思想、ロゴスへの信頼、悪の定義...、特にイエスが神の子として人間の世界に産まれて来た事で私達と神とが結びついた、なんて話は、神がいるとかなんで人間に分かると言えるのか?とか、神の子が人間界に現れたとする所がキリスト教の凄い所だとかいうけど何が凄いのか分からん、とかそんなこれまで持ってた疑問が晴れた。勿論理屈としてはそういう事なんだって知ってた訳だけども、この本で納得が出来た感がとても強くある。2023/08/21
ハンギ
0
とても良い本で、キリスト教にとって大事な概念や言葉について二人の方が議論をするという形式を取られています。1人は文筆家の若松英輔さんでもう1人はトマスアキナスの研究者ということです。私はプロテスタントだけど、お二人ともカトリックだけれどもあまり違和感を感じませんでした。愛はアガペーとエロスに分かれてアガペーの方が立派であるというのはむしろ常識と感じていたが、エロス的なアウグスティヌス的な愛が現代では支持されるという話を聞いてなるほど、と思いました。キリスト教はまだ日が浅いという話に納得しました。2024/01/26