内容説明
「一九七二年以前に生まれた人となら、歴史意識を共有出来る気がする」。札幌五輪、あさま山荘事件、ニクソン訪中など、数々の出来事で彩られたこの年は、六四年から始まった、高度経済成長期の文化変動が完了し、大衆化社会へと突入していく戦後史の分水嶺となる一年だった。縦横無尽に資料を渉猟し、一九七二年以降に生まれた者たちとの歴史意識の橋渡しを試みた、著者の代表的時代評論書。
目次
なぜ、この年なのか
ポルノ解禁前夜
日活ロマンポルノ摘発される
ストリップショーと「四畳半襖の下張」
連合赤軍事件と性意識
赤軍派と革命左派の女性観の違い
それは「水筒問題」からはじまった
永田洋子の期待と失望
遠山美枝子のしていた指輪
榛名ベースでの新党結成と意識の落差〔ほか〕
著者等紹介
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958(昭和33)年‐2020(令和2)年。東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部人文専修卒、同大学院英文科修士課程修了。1987(昭和62)年から1990(平成2)年まで「東京人」編集部員。1997(平成9)年、『ストリートワイズ』(晶文社)でデビュー。2001(平成13)年9月、『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』(マガジンハウス)で講談社エッセイ賞を受賞。2020(令和2)年1月13日、心不全のため急逝。「小説新潮」に連載中だった『玉電松原物語』が遺作となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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100
60
1972年を焦点に当時の雑誌と記憶による浅間山荘事件と大衆文化を軸した時代の転換期の再現と分析。そこから感じられるのは、大衆の感心が政治から娯楽にシフトしていく様子で、それはその頃の音楽の政治性のリアルさと以降の音楽が訴える政治性の薄っぺらさに現れる。本の素晴らしさを実感するのは著者の思想との交錯が感じられた時。雑誌「ぴあ」は大衆の都市への参加を解放したと分析する筆者は大衆とメディアの境界が曖昧になった現在をどのように見ていたのだろう…2022/06/19
阿部義彦
9
2000年に今は亡き文藝春秋の論壇誌「諸君」に連載された、坪内祐三さんの評論。連載当時、私も「諸君」は読んでましたが、第1回を読んでも当時はピンと来なかった記憶があって忘れてましたが、今回まとめて文庫で読んで、夢中になり歳をとった今だからこそ歴史認識が磨かれて腑に落ちる様になったのかな、とも思います。当時私は11歳、小学5年。白黒テレビであさま山荘事件をみた記憶は覚えてます、それに関する精密な著者の再検証が一番の見所でした、他横井庄一、はっぴいえんど、ぴあ創刊など坪ちゃんの代表作に相等しいと思う。合掌。2022/08/20
takao
2
ふむ2022/12/25
ひろふみ
2
連合赤軍事件に紙幅を割きすぎか。南沙織にもっと光を!2022/08/24
Makoto Miyamura
2
硬軟色々ある評論なので興味のある部分とそうでない部分がありますが、1972年という時代を感じられる本でした。2021/02/12