出版社内容情報
紛争で過激派学生と渡り合った後の東大総長も、若き日はマルクス主義の学生だった。希代の歴史学者が自らの半生とともに綴る昭和史。のちに東大総長となる著者が中学3年生のとき、昭和天皇は即位した。金融恐慌と山東出兵、戦争にむけて加速しつつある時代に著者は青春期を過ごす。
そして63年後、天皇は崩御し、同じ年、著者は参議院議員の任期を終えた。ベルリンの壁は崩壊し、第二次大戦の結果うまれた冷戦の世界は終焉を迎えた。
ここで自らの「昭和とともに生きた半生」を振り返り、同時に昭和とは何だかっのかを総括するため、本書を執筆する。
金融恐慌と山東出兵で始まった昭和。知識人の間ではマルクス主義が台頭し、多感な青年であった著者も当選のごとくこれに心酔する。戦時中は海軍に応召され、戦後も共産主義活動に参加するが、次第に現実との齟齬に気づきはじめ、共産主義から離れていく。
のちに西洋史家の泰斗となる筆者は、激動の世界情勢と、翻弄される日本を俯瞰して描くとともに、この間に自らがどのように感じ、生きたたかを活き活きと活写する。立体的な構成により、読者は昭和という時代を我が物のように追体験することができる。
歴史学者、東大教授となり、文学部長であったとき、安保闘争が起こり、奇しくも左翼活動家の学生たちと、大学の代表者として対峙する立場となっていた。力で要求を実現しようとする全共闘の学生たちにより173時間にわたってキャンパス内に軟禁されるが。あくまで筋を通し、暴力で国家を変えることはできないことえを身をもって示す。
東大総長を務めたのち、自民党参議院議員に。天皇崩御に臨んでは、天皇賛美を批判する共産党「赤旗」に対し「文藝春秋」誌上で反論、この論争は大きな反響を呼んだ。
昭和に続く平成も終わろうとしている今こそ待望の復刻版。「昭和」を多面的・重層的に振り返る歴史学者の視点から学ぶことはあまりに多い。
林 健太郎[ハヤシ ケンタロウ]
著・文・その他
内容説明
歴史学の泰斗が、自らの半生を重ね合わせながら活写した激動の昭和史。東大紛争で過激派学生と堂々と渡り合ったのちの東大総長も、若き日はマルクス主義に心酔する学生だった。時代の空気を肌で感じて生きた筆者が、金融恐慌から太平洋戦争、冷戦と安保騒動、ベルリンの壁崩壊までを俯瞰的に描いた名著。
目次
昭和の幕開け
南京事件と山東出兵
満州某重大事件と天皇の悲劇
「旧制高校」というもの
マルクス主義に心酔した頃
西洋史との出会いと滝川事件
二・二六事件と昭和天皇の決断
スペイン内乱とシナ事変
東大経済学部の内紛
太平洋戦争と私の召集
敗戦から戦後へ
共産党シンパから社会党シンパに
戦後日本の大きな岐路
冷戦のはじまり
清水幾太郎と全面講和運動
進歩的文化人との最初の論争
六〇年安保騒動の前夜
二年間の欧米留学
ベルリンに壁がつくられた日
安保騒動後の日本、そして世界
東大紛争百七十三時間の軟禁
昭和は終わり ベルリンの壁は崩れた
著者等紹介
林健太郎[ハヤシケンタロウ]
大正2(1913)年1月2日生まれ。歴史学者。東大名誉教授。東京府立第六中学校(現在の都立新宿高校)、第一高等学校を経て、昭和10年東京帝国大学を卒業。その後、一高教授となり、22年東大助教授、29年教授となる。43年東大紛争当時は、文学部長として活躍。48年に東大総長となる。その後、日本育英会会長、国際交流基金理事長、自民党参議院議員等を歴任。平成16(2004)年8月10日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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