出版社内容情報
田中角栄論、オルテガ論などを収めた、著者の原点を示す最初の評論集。「大衆化した保守主義」までを容赦なく斬る。
保守論壇重鎮の初期代表作
田中角栄論、オルテガ論などを収めた、著者の原点を示す最初の評論集。「大衆化した保守主義」までを容赦なく斬る。
内容説明
気鋭の経済学者として頭角を現した著者は、本書によって論壇に鮮烈なデビューを果たす。田中角栄からハイエクまでを縦横無尽に論じる社会批評家としての著者の真髄がここにある!
目次
1 状況(田中角栄と戦後民主主義;’80年代を生きる ほか)
2 知識人(“高度大衆社会”批判―オルテガとの対話;知識人の言語障害 ほか)
3 体験(庶民の生活感覚;「松の木」での教育 ほか)
4 書籍(政治における呪術―伊藤昌哉『実録自民党戦国史』;正義とは何か―日本文化会議編『西欧の正義 日本の正義』 ほか)
5 文明(文明比較の構造―ひとつの日本主義批判)
著者等紹介
西部邁[ニシベススム]
1939年北海道生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学教養学部教授を経て評論家となる。94年より2005年3月まで「発言者」の主幹を務める。現在、「表現者」顧問。著書に『経済倫理学序説』(吉野作造賞)、『生まじめな戯れ』(サントリー学芸賞)、『サンチョ・キホーテの旅』(芸術選奨)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドクターK(仮)
4
痛烈な大衆社会批判を軸に、時評から文明論に至るまでまさに縦横無尽に論じている。本書を読むと、著者の圧倒的な知性の土台は、膨大な読書や学術的な研究だけでなく、自身の強烈な人生経験によって形作られてきたのではないかと思えてくる。左翼の学生運動に傾倒した若き日や、ヨーロッパをはじめとする海外でのエピソードは、社会へ鋭い眼差しを向けた評論であると同時に、ユーモアと悲哀が入り交じった物語でもあり、著者の人間性にも惹かれてしまうような文章だった。2014/11/26
Mark X Japan
3
一言一言をよく噛みしめないと理解できない内容の深さはは,著者の教養の賜物のでしょう。読んでいる途中で,著者が亡くなり,噛みしめるように最後まで読みました。再読した時は,完全に理解できたらいいなと思います。著者に敬意を表し合掌。☆:5.02018/01/23
つかぬ間の休息
2
以前にオルテガに熱を上げたことのあるものとしては内容理解もしっくり来るものが多かった。保守とウヨさんが違うことを示す上でも好著。これが1980年代に著されたのが驚くべきことだ。ただ、こうした保守の在り方が、よく言えば慎み深く、悪く言うなら消極的に過ぎるのは、自分にとって物足りなかった。革新ありきの保守という思想は、根源的にも、現代的にも、オーバーエイジなのではないだろうか2014/09/19
マウンテンゴリラ
1
著者に対して、思想的に殆ど心酔と言って良いほどの魅力を感じており、以前から読みたいと思っていた著作であったが、ようやく読了することが出来た。まさに大衆批判を旨とする著作であるが、著者が心酔する哲学者のオルテガ以上に、非知識人である大衆に対しても、容赦のない批判を加えているようにも感じられた。それが、凡庸であることを至上の権利と考えている私自身のような人間に対する、覚醒の書にもなっていると勝手に解釈した。→(2)2014/10/23
トックン
0
西部は依然「赤い太陽族」である。自己弁護的に最終章にアメリカでの体験を載せているが、決してマルクスから足を洗い保守へ転向したのではない。「大衆」とは「ブルジョア」のことである。自身の大衆性を「不気味なもの」(フロイト)、つまり身近なものの反復としている所が印象的。一億総知識人=大衆=専門人=化した中で、理性を懐疑し続ける氏は、個人とセカイの関係の回復として習慣を重視する。これは東浩紀のいうニコ生のコメ(空気)に近い。セカイ系的な想像力とは保守思想と親近性があるのかも東のクラナド=ヤンキー評とも関連あり。2020/05/03