出版社内容情報
日本文学の特性とは何か? 藤原惺窩、近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成などの江戸文藝を丹念に読み、その問いに答える。初文庫化。
文藝評論家の江藤淳氏は1964年、米国のプリンストン大学への留学から帰国し、翌年に本書の元となった連載「文学史に関するノート」を「文學界」で始めた。連載で探求されたのは「日本文学の特性とは何か」という問いであり、探求の対象とされたのは、「近代以前」の江戸文藝であった。
日本にいるとき、「日本文学」の存在は自明であるが、ひとたび日本を離れれば、それは中国文化圏の周縁で育まれた亜種として捉えられる。亜種以上の特性を持っているとするならば、それは何か。本書を貫くのは、そのような切実な問いかけである。
具体的には、幕藩体制を支えることとなった朱子学的秩序を創始した藤原惺窩、その弟子・林羅山の足跡が丹念に追われ、人形浄瑠璃の世界を確立した近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成らの作品が精緻に読み解かれていく。 江藤氏は、中国大陸からの圧倒的な外圧や影響が強く意識され、それによって乱された日本語の「自然な呼吸」を取り戻そうとするときに、日本人が古典として持つに足る「日本文学」が生み出されてきたことを繰り返し書く。
「日本文学の特性とは何か」を探求しながら、日本人や日本語にとって、「文学」とはどのような営為であったのかを深く考えさせる刺激に満ちた文藝批評である。
2013年10月創刊の文春学藝ライブラリーの第一弾。解説=内田樹。
内容説明
米国留学後、文藝評論家・江藤淳は「日本文学にどんな独自性があるのか」という問いに答えるために江戸文藝に沈潜した。その読解から、外来の文藝・思想に乱された母語の息遣いを取り戻そうとするとき、日本文学の伝統が創造され、守られてきたことを提示する。
目次
歌学から儒学へ
林秀才とその周辺
僧形の儒者
三つの都市
非現実の美学
道行の構造
『国性爺』と国家意識
西鶴と「浮世」
明治における西鶴
上田秋成の「狐」
月は朦朧の夜
著者等紹介
江藤淳[エトウジュン]
1932年、東京生まれ。文藝評論家。慶應義塾大学英文科卒業。在学中の56年に『夏目漱石』を上梓。58年に『奴隷の思想を排す』、59年に『作家は行動する』を発表し、評論家としての地位を確立する。99年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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