出版社内容情報
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです…内田樹、青山七恵ら豪華執筆陣が少女の成長物語の金字塔「魔女宅」の魅力を読み解く。
キキはどうして飛べなくなったか?
魔女のキキが飛べなくなること、黒猫のジジと言葉が通じなくなること、働くということ……内田樹、上野千鶴子、青山七恵らが、少女の成長物語の金字塔「魔女宅」の魅力を読み解く!
内容説明
ある満月の晩、13歳の魔女・キキは、黒猫のジジとホウキに乗って故郷を飛び立つ。初めての町、初めての出会い、初めての仕事、初めての挫折…少女の成長物語としても人気の高い作品の魅力を、内田樹、上野千鶴子、青山七恵ら豪華執筆陣が読み解く。挿入歌の松任谷由実と宮崎駿による貴重な対談など、再録記事も充実!
目次
1 映画『魔女の宅急便』誕生(鈴木敏夫・頭を殴られた一言とプロデューサー洗礼の日々;角野栄子・鳥の目から見た町;宮崎駿・この作品では、一人の人間のいろいろな顔を見せたかった ほか)
2 『魔女の宅急便』の制作現場(プロデューサー・脚本・監督・宮崎駿「キキが黒い服をまとうわけ」;キャラクターデザイン・作画・近藤勝也「絵には自分の内面が表れますね」;美術・大野広司「リアルさと存在感そして光の表現にてこずってます」 ほか)
3 作品の背景を読み解く(松任谷由実×宮崎駿―やさしさに包まれたなら、少女は…;柳澤健―ユーミンはもう、キキではなかった;青山七恵―キキが教えてくれたこと ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムッネニーク
105
96冊目『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』(スタジオジブリ/文春文庫 編、2013年12月、文藝春秋) 作家や大学教授など、高い見識を持つ論者たちが読み解く『魔女の宅急便』。 宮崎駿と松任谷由実やC.W.ニコルによる対談も掲載されており、宮崎ファンならとても興味深く読むことができるはず。才能、自立、性への目覚め、親離れ、ユーミン、魔女の歴史など、論者によって全く読み解き方が違うというのは面白い。 「あの時よりも痛みや挫折や優しさを知っている、かつて十三歳だった全ての大人が、今こそ観るべき映画なのだ。」2021/12/17
レモン
51
天から授かった才能を持っている人の悩みは凡人には理解できないなぁ、と凡人の私は他人事で観賞できる。作家や大学教授などそれぞれの得意分野から掘り下げた寄稿が多いが、子どもから大人まで単純に楽しめて専門家は考察が捗る奥が深い映画だと感じる。ジジの言葉がわからなくなった理由は、本書を読んで腑に落ちた。昔からウルスラの絵が大好きなので、この絵をじっくり眺められるのも魅力の1つ。2023/09/25
へくとぱすかる
49
豪華な執筆陣である。内田樹、上野千鶴子、松任谷由実、C・W・ニコル・大塚英志……もちろん原作者・角野栄子。「教科書」というだけあって、単なる雑談ではなく、映画の読み解き・テーマの掘り下げなど、深くて真剣で、それでいて「魔女宅」への愛と興味がひしひしと感じられる文章群。女性の自立とか職業に対する取り組みや態度とか、ティーンの心を打った映画だが、社会人になりたての世代にこそ観てほしい作品なのだと思う。映画は1989年だが、本書の出版はずっと後。でも、いつまでも語られ、愛される映画だという証明のような気がする。2025/01/31
はるき
42
子供のころ、レンタルショップに行くたびにこの作品を借りて帰った。帰ったら返す日まで延々と実家のテレビを占領しかねない勢いで、テープがすり切れるんじゃないかと思うくらい繰り返し観た。それくらい幼いころの私にとって大切な作品である。本書では様々な方が考察したり回想したりする。興味深く読ませてもらったが、やっぱり私の中にある、熱病にかかったように熱中した時に気持ちが何よりも一番だと思う。2016/08/20
佐島楓
28
母に連れられて初めて映画館で観たジブリ作品が、本作だった。だからこの作品は自分の中で特別な位置にあるはずなのだけれど、終盤の展開が原作の童話と異なっていることをずいぶん不満に思ったことを覚えている。この本によるとやはり賛否あった展開だったらしく納得。「才能」という言葉が連発される。キキの飛ぶ才能、駿監督の描く才能・・・。浮かび上がって飛ぶための苦しみを描いたという意味で、きっとこの作品は、万人のためにある。それがわかっただけでも、読んで本当によかった。2014/01/07