出版社内容情報
【目次】
内容説明
物語を読み取れない子どもが増えている。葬儀で村人が煮炊きする場面を「死体を煮ている」と誤読する小学生たち。家庭による教育機会の格差を、公教育が是正できなくなっている―取材をすすめる中で著者は、現実に直面する。根源には何が?国語力は再生できるのか?現代日本の不都合な真実に正面から挑む、渾身のルポ。
目次
第一章 誰が殺されているのか―格差と国語力
第二章 学校が殺したのか―教育崩壊
第三章 ネットが悪いのか―SNS言語の侵略
第四章 三四万人の不登校児を救え―フリースクールでの再生
第五章 ゲーム世界から子供を奪還する―ネット依存からの脱却
第六章 非行少年の心に色彩を与える―少年院の言語回復プログラム
第七章 小学校はいかに子供を救うのか―国語力育成の最前線1
第八章 中学校はいかに子供を救うのか―国語力育成の最前線2
著者等紹介
石井光太[イシイコウタ]
1977年、東京都生まれ。ノンフィクション、小説、児童書などを幅広く手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Shun
34
話題になった”「ごんぎつね」を読めない子供たち”というコラムが伝える国語力低下の懸念。最初はにわかに信じがたい状況に思えましたが次第に危機感を抱くようになった。小学生とはいえ、亡き母を鍋で煮ている光景ですと真面目に議論する子供たち。そこには読解力だけでなく想像力や感性といったものまで欠けている現状があった。その原因は家庭環境の他にも現代の複雑な社会、例えばSNSや学習指導要領に追加されたSDGsや多様性といった新しい概念まで様々だ。問題は根深く教育環境の改善が急がれる。一人でも多くの人に読んでほしい1冊。2025/07/23
てくてく
9
「ごんぎつね」の葬儀シーンが理解できない子どもたちから始まって、コミュニケーションを下支えする国語力、言語化およびその理解力の欠如に由来するトラブルや問題、明確な理由が本人すらわからない不登校、ゲーム依存とそれによる言葉への影響など、様々な問題を取り上げた上で、国語力育成の最前線を紹介することで、国語力回復のために何が必要かを示唆する一冊。日本女子大附属中高の文庫本一冊を一学期間かけて精読する取り組みが魅力的だった。2025/07/12
水蛇
7
国語力があらゆる思考とコミュニケーションの基礎であるのは明白なことで異論ないしSNSやゲームが複雑な影響を与えてるのは取り組むべき事実だと思うけど、全体的にバイアスきつめ。序章からして、現代の小4にとってごんぎつねの時代のお葬式は当然ながら完全なる異文化なこととか、なんなら葬儀場に行くだけのお葬式すら体験したことない子が多いであろうこととかぜんぶすっ飛ばして若い世代を嘆きたい気持ち先行してない?データが少なくて、現場と著者の印象的なエピソード(≒主観)が多すぎる。平成に子どもだったわたしからすると、2025/08/26
さみ
6
筆者の主観であるルポは割と好き。怒りや悲しみなどの感情の度合いを説明する言葉を持てず、「死ね」「殺すぞ」と鋭利な言葉を発する子どもたち。そしてその言葉を額面通り受け取り、自分の価値や尊厳を言葉で表現できないがために「死ねと言われたから死ぬ」と自殺に至る子どもたち。フリースクールや少年院での感情の持たせ方、言葉の表現のさせ方が参考になった。ラストで紹介されるような最先端の国語教育を田舎の公立校で実施することは困難だと思うが、おすすめの本を子どもと相互に紹介しあう「読書通信」は家庭でもやってみたいと思った。2025/09/15
misokko
6
文中に文科省の定義の国語力は「考える」「感じる」「想像する」「表す」とあった。私は「表す」を意識的にしてこなかった。言っても無駄、わかってもらえない。が主な理由。子育て中もそうだった。彼らが人間関係につまづきを感じているらしく、もしかしたらその一端は自分のコミュニケーションの撮り方にあったのかもしれないと思う。人間深く思考をする時には「自分の言葉が必要」だと思っている。高等教育ほど「母国語」で学ぶことが大切だが今国内では「英語で」が流行り。佐々涼子さんのダブルリミテッドも重なり暗澹たる気持ちになる。2025/08/08