内容説明
幸せな人生だった。これからも幸せな日々が続くはずだった―。そんなある日、ふいに断ち切られた日常。幼い娘を喪った青子と、乳癌を宣告された茅乃は、10年ぶりに再開した合気道をきっかけに、かつての仲間たちと再会する。大人になり、痛みを知った男女4人の交流が胸を打つ、第166回直木賞候補作。
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年、千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。17年『くちなし』で第158回直木賞候補。18年同作で、全国の高校生の議論により選ばれる第5回高校生直木賞受賞。22年『新しい星』で第166回直木賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
piro
45
かつて大学の合気道部で切磋琢磨した青子、茅乃、玄也、卓馬の4人。彼らの30代からの約10年間をそれぞれの主観で描く連作短編集。それぞれに降りかかる困難や悲しみ、喪失と再生。その時傍に寄り添ってくれる友の存在にじんわりと温かい気持ちになる。そして彩瀬さんが紡ぐ繊細な言葉によって、彼らの思いを体感できた気がします。悲しいのに悲しくない。美しくて優しいお話でした。この様なかけがえのない友に恵まれた彼らは、きっと幸せになれる。満ち足りた気持ちにさせてくれる、心に残る作品でした。2025/03/13
エドワード
38
四分割されたパソコン画面で酒を飲む、リモート飲み会。コロナ禍の時の話だ、とすぐわかるね。大学の合気道部で共に過ごした、青子、茅乃、卓馬、玄也。30代になり、青子は子供を誕生とともに亡くす。茅乃は乳がんを患う。卓馬は妻子と別居中。玄也はパワハラで引きこもる。人生いろいろだ。後半は手術で治ったはずの茅乃の乳がんの再発と彼女の死。よく「故人は湿っぽいのが嫌いでしたので」と言うが、葬儀の夜に飲み明かす三人。それは深い悲しみの裏返しだ。茅乃は彼らの心の中で生きている。包み隠さず話せる仲間。それは人生の宝だと思う。2025/03/23
seba
30
文庫化を心待ちにしていた作品。新年度の一冊目に読めてとても良かった。大学時代、合気道部で共に過ごした男女四人組は、三十歳を過ぎて再び交流を持つように。今彼らはそれぞれ、健やかなはずだった人生を断ち切られ呻吟している。それは不時着した新しい星で、生きる術を新たに会得しようとしているかのよう。哀しみに自分の心や相手の心が染まっていくことの両方に対し、自覚的で敏感な四人の距離感が素敵。「受け止められることが当たり前になると、心が鋭敏になっていくようだ」という一文が特に腑に落ちた。私も心を磨ける場所を見つけたい。2025/04/01
だい
23
大学時代の合気道部に所属していた仲良し四人組の数十年後が、それぞれの訳アリ人生を絡めて連作短編の8つの物語として描かれています。 大切なもの、愛するものを失い途方に暮れる毎日から再び一歩踏み出す勇気と再生の物語で読み終わったあとの静かに押し寄せる感動に満足の一冊です2025/05/17
よっち
20
大学時代の合気道部で同期だった四人のなかなか上手く行かない人生、愛するものの喪失とそこからの再生を描く連作短編集。大学を卒業してそれぞれの道を進んだ彼女たち。30歳を超えてから娘の死から暗転した青子の人生、職場で上手く行かずに辞めてから引きこもりになってしまった玄也、乳癌を患ってしまった茅乃、そして疫病で妻子と離れて暮らす卓馬。茅乃のリハビリをきっかけに再会してもそれぞれのままならない人生はそうそう変わらなくて、それでも大切に思える仲間がいてくれる安心感をしみじみと実感させてくれる絆が印象的な物語でした。2025/03/06