出版社内容情報
技術の粋を集めて作ったヴィンテージアロハの精巧な偽物を売り捌く男は、やがて……(「ヒタチヤ ロイヤル」)。素人の蔵から出た重文級の屏風。協力者を仕立て、安く買い叩こうとするが(「栖芳写し」)。古美術業界を舞台に、尽きることのない人間の欲望と騙し合いを描く、著者十八番の傑作美術ミステリー連作集。解説・山村祥
6つの“逸品”に群がる金の亡者たち
「どいつもこいつも欲たかりや!」
傑作古美術ミステリー!
内容説明
技術の粋を集めて作ったヴィンテージアロハの精巧な偽物を売り捌く男は、やがて…(「ヒタチヤ ロイヤル」)。素人の蔵から出た重文級の屏風。協力者を仕立て、安く買い叩こうとするが(「栖芳写し」)。古美術業界を舞台に、尽きることのない人間の欲望と騙し合いを描く、著者十八番の傑作美術ミステリー連作集。
著者等紹介
黒川博行[クロカワヒロユキ]
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学卒業後、高校で美術を教え、86年、『キャッツアイころがった』で第4回サントリーミステリー大賞を受賞し、作家活動に入る。96年、『カウント・プラン』で第49回日本推理作家協会賞、2014年、『破門』で第151回直木賞を受賞。大阪を主舞台にした軽妙な語り口の中に、産廃問題や北朝鮮関連などの社会的テーマを取り込んだ独自の小説世界を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
61
黒川夫人手になる、この装丁。すっかりお馴染み。展開ジャンルは古美術…氏の得意分野とあって、力まず軽いタッチ。3話目。個人的に文福…が一番面白かった。今回の主役は美術雑誌編集長 佐保…正直、読者層はかなりマイナーか。高級車が走り回るシーンはお馴染みながら、今回は距離が伸びなかった感。佐保はもとより、世間には有象無象の狸レベルがゴロゴロ…これが社会だね。縮小模型、古代裂、ヴィンテージ、屏風絵、青銅器!歴史の一コマでしか知らないモノがロンダリング…一瞬で桁が一つ上がる世界は無縁すぎて気色悪いや2024/10/22
10$の恋
35
さすが美術関係に造詣が深い黒川さん、なんせ奥様が日本画家やし。いろんな贋作詐欺の連作短編がニヤリとさせよる。美術書出版社の佐保っていう男が主役でいかにも胡散臭いんやけど、こいつが絶妙。ちょいちょい出てきてエエ働きをしよる。工芸品、骨董、アンティーク、古書…、こんなもん素人が見ても真贋が分からへん。騙す狸と騙されるアホ。欲の皮が突っ張った人間同士の欲が滑稽やわ。古美術や骨董の世界は怖いな。引っ掛かったヤツは間抜けやけど、すぐさま意趣返しで一太刀浴びせる。会話の妙も相変わらずで、黒川作品は分野が広くて愉快♪2024/04/29
tomo
16
☆☆☆☆ 4.2 美術でも“品”の一文字つくと、急に金のニオイが。まったく知らない贋作の手口が、金が絡むと美術品は怖っ。“なんでも鑑定団”を見ると美術品好きな人がこんなにたくさん、贋作は尽きないわけですね。2024/06/24
しろくまZ
12
黒川博行の作品だが、ヤクザも悪徳刑事も出てこない。主人公・佐保は美術雑誌の編集長で、小狡いオヤジである。その佐保も絡み、美術品、骨董品などを巡って、詐欺師や悪党が騙し合うという内容。読んでいても爽快感は無いし、詐欺師どもの小狡さに不快感を覚えることもあった。それにしても、大金をはたいて骨董品や美術品を手に入れ、それを仲間に自慢するコレクターの心情は、全く理解できない。2024/09/08
汲平
8
美術誌の編集を中心とした美術界の騙し合いを描く連作短編。小気味よい関西弁のマシンガントークによる狐と狸の丁々発止のやり取りが、騙される身にはとんでもないが、傍で見ている読者には小気味よい。2024/05/05