内容説明
江戸時代から続く金沢の芸者置屋盲剣楼で終戦直後に起きた大量斬殺事件。無頼の徒に襲撃され密室状態となった楼の中で、乱暴狼藉の限りを尽くす五人の男を一瞬にして斬り殺した謎の美剣士。それは盲剣楼の庭先の祠に祀られた伝説の剣客“盲剣さま”なのか?七十余年を経て吉敷刑事がたどり着いた真実とは。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年、広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年に『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たし、以後、本格ミステリの旗手となる。また、「島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や、中国語によるミステリー新人賞「島田荘司賞」の選考委員をつとめるなど、後進の育成にも尽力している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tetchy
97
17年ぶりの吉敷竹史シリーズ。これまでの作品とは異なり、御手洗シリーズのような入れ子細工な構造になっている。物語の大半を占める時代小説『疾風無双剣』、これが滅法面白い。真剣から竹刀に持ち替えた剣士達が横行する江戸時代に残されたラストサムライの悲運、平和な村を悪党どもに征服されそうになる村人達の懸命の抵抗、遊郭で凜として助け合いながら生きていく女性達の姿などが盛り込まれ、現代パートでは事件の背景となった昔の日本が行った朝鮮人への虐待の歴史の今なお続く怨嗟など盛り沢山だった。しかし盲剣さまはモテすぎだなぁ。2025/03/16
おうつき
20
現代パートとは別のエピソードがかなりの文量を割いて挟み込まれる、というのは島田荘司らしい構成だが、今作はむしろそっちの方がメインになってしまっているくらいの割合。剣客を巡る物語はかなり読ませる内容で、ミステリ小説であることを途中忘れてしまった程。吐き気を催すような悪人の描写に胸糞悪くなりつつ、終盤は胸が熱くなってしまった。ミステリ部分はかなりあっさりしていたが、肩透かし感はさほど感じない。2024/05/19
はかり
19
久しぶりの島田荘司本。しかも、時代劇というのも特筆ものだが、文庫本で900頁を超えるのもとてつもなく重い。吉敷竹史刑事も久しぶりの登場だった。そう言えば、何カ月ぶりかの読書でもあった。これを契機に読書を再開できれば。ともかく島田がいい仕事をしていた。2023/08/28
naolog
9
島田荘司の新刊!と思ってすぐ買ったものの、吉敷何とかシリーズは読むつもりなかったな…と放置していたもの。読むものがなくなってきて手を出したらぐいぐい引き込まれる。吉敷のいる現代シーンはほぼなく戦後の「盲剣桜奇譚」と江戸時代の「疾風無双剣」がメインかと思わせるボリューム。世の中は変わっていくものと変わらないものがある。2024/03/17
shonborism
5
シリーズものだが初読。中に時代小説が600ページほど挟まっている異色作。作中作にのめり込んでいくうちにだんだん本編の内容が思い出せなくなっていく。作中作のまま残りページが少なくなっていき不安になるも、最後はスッと謎解きもあって安心する。2023/08/27