内容説明
傷つき悩み、惑う人々に寄り添っていたのは一匹の犬だった―。2011年秋、仙台。震災で職を失い、家族のため犯罪に手を染めた男。偶然拾った犬が男の守り神になった(男と犬)。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた(夫婦と犬)。人と犬の種を超えた深い絆を描く感涙作。第163回直木賞受賞
著者等紹介
馳星周[ハセセイシュウ]
1965年、北海道生まれ。横浜市立大学文理学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライターに。96年、デビュー作『不夜城』がベストセラーとなる。98年『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で日本推理作家協会賞長編部門、99年『漂流街』で大藪春彦賞、2020年『少年と犬』で第163回直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しげき
168
犬が主役とあって常識では計れない不思議な物語。とにかく主人公の犬が賢い。私より人の心を読み取れて、しかも優しかったです(笑)我が家の犬はエサの時間になったら尻尾振ってるだけなのに。 ラストは泣ける結末。2023/10/16
Tadashi Tanohata
155
巻末の先生のプロフィールに「北海道生まれ」とある。「ちょっと待って、北海道には札幌あれば函館もある。長万部や女満別もあるぞ」とひとりごちながら札幌行きのpeachで読み始め帰路関空便のpeachで読了。帰路Pではかろうじてメガネのフレームで堰き止めて。「ありがとう多聞」2023/08/29
fwhd8325
146
最終話のエピソードを匂わせることなく、6つのエピソードが綴られていきます。少し、消化不良な印象を感じるエピソードもありますが、7つめのエピソードですべてが収まります。多聞の存在感はとても大きく感じます。そして、各エピソードに登場する飼い主の方も短編ながらも深く描かれていると感じました。2024/02/15
dr2006
99
感動した✨一匹の犬(多聞)と関わった人々の岐路を描く連作。動物が主人公の場合、擬人化して言葉を話させるのも可能でむしろ簡単だろうけど、本作の犬(多聞)は言葉を話さない。だが、不思議と犬の強い意志と人を慮る言葉が伝わってきた。勿論、犬の言葉を想像した人が独白する場面を含めてだけど⒲多聞は様々な情況にある人々と短い期間関わり、その人の人生の変転を一緒に過ごす。やがて潮時になり立ち去るのだが、それは別の明確な目的があったからだ。納得の直木賞!馳星周は初読みだったが他の作品も是非読みたい。未読の方にもお薦め。2024/08/05
ぶち
94
あの震災で飼い主を失った犬が、北から南への旅に出る。犬が途中で出会うのは、悩みや苦しみ、淋しさを抱えた人たち。この犬との出会い方、性別、年齢、過去、何もかも違いますが、この犬に支えられていきます。その様子は、犬と人間との間には何か特別な絆があると思わせてくれます。旅の果てに待っていた運命はハッピーエンドではありませんが、目的を果たしたことは確かです。犬とは「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる」という登場人物の言葉と、「心の中でずっと生きている」という少年の言葉がこの小説のすべてを表わしていると思います。2025/04/04
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