出版社内容情報
俳句を詠む、俳句を味わう喜びを一冊に閉じ込めた、
俳句甲子園世代の旗手の初エッセイ集
恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦にからめとられた。
幼い息子の声、母乳の色、コンビニのおでん、蜜柑、家族、故郷……日常の会話や風景が、かけがえのない顔をして光り出す。
正岡子規を生んだ〈俳句の聖地〉、愛媛県松山市に生まれ、高校時代に俳句甲子園をきっかけに俳人となった神野さん。
NHK-BS「俳句王国」司会などマスメディアでも活躍する才媛が、明晰にして情緒あふれる筆致で俳句の魅力に迫る珠玉のエッセイ集。
人は変わらないけど、季節は変わる。言われてみればそうかもしれない、と頷く。
定点としての私たちが、移ろいゆく季節に触れて、その接点に小さな感動が生まれる。過ぎ去る刻をなつかしみ、眼前の光景に驚き、訪れる未来を心待ちにする。
その心の揺れが、たとえば俳句のかたちをとって言葉になるとき、世界は素晴らしいと抱きしめたくなる。生きて、新しい何かが見たいと思う。
季節はめぐる。つられて、私も歩き出す。一歩、一歩。俳句と一緒に。
(「あとがき」より)
内容説明
「恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦に絡めとられた」。正岡子規を輩出した愛媛松山で生まれた少女は16歳で運命的に俳句と出会う。恋愛、結婚、出産、子育て―。ささやかな日々から人生の節目までを詠んできた俳句甲子園世代の旗手が、俳句と生きる光を見つめ、17音の豊饒な世界を案内するエッセイ集。
目次
第1章 ここもまた誰かの故郷 氷水―夏(季節を感じとる力;全部やだ男 ほか)
第2章 檸檬切る記憶の輪郭はひかり―秋(寂しいと言って;沈黙の詩、静寂の世界 ほか)
第3章 負けてもいいよ 私が蜜柑むいてあげる―冬(逢いたかったよ;私の働き方改革 ほか)
第4章 短めが好き マフラーも言の葉も―俳句(しづかなる水;じいんじいん ほか)
第5章 母乳ってたんぽぽの色 雲は春―春(薄氷を踏んで;わたしの子規 ほか)
著者等紹介
神野紗希[コウノサキ]
俳人。1983年、愛媛県松山市生まれ。お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。現代俳句協会副幹事長。立教大学・聖心女子大学講師。愛媛県立松山東高校在学中の2001年、第4回俳句甲子園に参加し団体優勝、「カンバスの余白八月十五日」が最優秀句に選ばれる。2002年、第1回芝不器男俳句新人賞坪内稔典奨励賞を受賞。NHK‐BS「俳句王国」司会、Eテレ「俳句さく咲く!」選者などを務めた。2019年、『日めくり子規・漱石 俳句でめぐる365日』で第34回愛媛出版文化賞大賞、第11回桂信子賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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