内容説明
前任者の遺したファイルから明かされる菖蒲家の遠大な計画。秘術アヤメメソッドをめぐって暗躍する各国諜報機関。米大統領オバマの新都・神町訪問が迫る。ラリーと作家はスーツケース爆弾を追い、息子はママを恋しがる。彼らは世界を救えるか?『シンセミア』『ピストルズ』からつづく神町トリロジーここに完結。
著者等紹介
阿部和重[アベカズシゲ]
1968年生まれ。山形県出身。94年「アメリカの夜」で第37回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。99年『無情の世界』で第21回野間文芸新人賞、2004年『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞・第58回毎日出版文化賞をダブル受賞、05年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、10年『ピストルズ』で第46回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅう
78
良く言えば壮大、悪く言えば冗長といった印象だろうか。傑作、とはとても呼べない、お世辞にも。かと言って、駄作、と言い切れるもんでもない。評価が難しいと感じた。「謝辞」のなかで著者は、「神町を書くのはこれで最後である」と言っている。そんな集大成的な意味合いを持つこの小説がこれでよかったのだろうかと疑問は残る。正直に言えば、私のなかではそれほど響かなかった。特に、アヤメメソッドにまつわる「明晰夢」が評価を難しくした。神町を書かなくなった著者が次に何を書くのか、また注目していきたい。2025/07/19
イシザル
10
May U Live 2 see the dawn この神町シリーズは、プリンスの曲で始まりプリンスの名言で終わる。長いわりには達成感がない村上春樹と一緒で色々な伏線回収はなしまぁ想定内。しかし最後プリンスの名言の引用で納得した。(紫の表装も意図的?)2023/05/29
めだいさる
7
過去2作と比べて、「ここ削れるだろ」と言いたくなるような冗長さを感じたが、それなりに楽しく読めた。 神町トリロジーは読書メーターに登録していなければ、読まなかったかもしれないので、読友さんと読メに感謝。 次は『ニッポニアニッポン』を読む予定。2025/08/12
カエル子
5
終わってみれば、「阿部和重」のイクメンアピール? 冒険活劇? オッサンふたりの友情物語? みたいなお話でした(違っ笑)。アレックスはいつまでも「地下室の幽霊」なのにラリーにかけられてた呪縛はかんたんに解けちゃったんだっけ?とか細かいところで気になる部分はありつつも、記憶の彼方に飛んでいっていた『シンセミア』の回顧もさり気なく入れておいてくれる著者の気配りによって再読しなくても、というかおそらく『オーガ(ニ)ズム』だけでもけっこう楽しめるようになってます。オススメか?と問われるとちょい微妙。2023/07/29
フレディー
4
シンセミア、ピストルズに続く神町を舞台とした三部作がついに完結!過去2作と比較するとエンタメ要素が強く、長編ではあるが比較的読みやすかった。結局のところ、人間は感情がある生き物で感情があることこそが人間を人間たらしめている。これは、どんなにAIが発達しても変わらないだろうし、むしろより鮮明になるのではないか。72歳の阿部和重も自身の54日間の冒険譚を誰かに共有したいという感情を持っていたことが印象的。2023/05/07