出版社内容情報
伊吹 有喜[イブキ ユキ]
著・文・その他
内容説明
不登校になった高校2年の美緒は両親とのこじれた関係から逃れるように新幹線に飛び乗り、盛岡へ向う。そこでは祖父が羊毛を手仕事で染め、紡いで織る工房を営んでいた。手伝ううち、いつしか美緒は「自分の色」を紡ぎたいと思うようになる―。時を越える布“ホームスパン”を巡る感動作。高校生直木賞受賞!
著者等紹介
伊吹有喜[イブキユキ]
三重県生まれ。2008年『風待ちのひと』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、デビュー。14年刊『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補となり、18年に映画化。17年刊『彼方の友へ』は第158回直木賞候補、第39回吉川英治文学新人賞候補に。20年刊『犬がいた季節』が本屋大賞3位になり、第34回山本周五郎賞候補に。同年刊行の『雲を紡ぐ』が第163回直木賞候補となり、第8回高校生直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさきち
134
岩手の環境や魅力について細かく表現されていた半面、登場人物各人の詳細については触れずに描かれていた印象。だからこそそれぞれがどう思い、何に悩んでいるのかに想いをめぐらせ、楽しめた一冊でした。2024/03/09
はっせー
133
羊毛や手芸が好きな人や宮沢賢治さんが好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!読了後の満足感がとても強い作品。あらすじとして高校に通わずに引きこもっている美緒が主人公。その美緒が父方の祖父が作るホームスパンの工房へ家出する。そしてそこで羊毛やホームスパンに魅了されて成長するお話。この本を読んだとき物語という1つのホームスパンに色々な色という要素が入っているんだなと感じた。成長。感動。青春。その中に静かだけど一際輝いているのが宮沢賢治さんの要素だろう。静かで美しいイーハトーブの香りを感じられるそんな本である2023/03/08
タイ子
130
子供が学校に行きづらくなった時親はどうすればいいのか。学校に行く以外に選択肢はあるのに、親の期待を押し付けてしまっていないか。両親と衝突した高2の少女・美緒は家を飛び出し、岩手の祖父の元に向かう。祖父の紡ぐホームスパンの色彩に魅了された美緒は織物の先生とその息子たちから羊毛を紡ぎ、布を織りあげていくことを教わっていく。片や、美緒の両親もそれぞれ自分たちの仕事で悩み夫婦関係も危機的状況に。糸は切れてもつなげることができる、家族の絆もいつか…。岩手の風景、羊毛の手触り、色彩の豊かさ、全てが心優しい物語。2023/01/17
となりのトウシロウ
122
羊毛から手作業で糸を紡ぎ手織りするホームスパン。そんな毛織物をめぐる親子三代の物語。高校生の美緒は学校での人間関係が悪く自宅に引きこもるようになる。母真紀はそれに苛立ち、美緒を叱咤激励する。ある日、毋と衝突した美緒は祖父絃治郎が営む盛岡のホームスパン工房へ向かう。親として真紀の気持ちはよく分かる。しかし絃治郎のより労わり深い言葉にハッとする。親離れし独り立ちしていく子を持つ親の寂しい気持ちもよく分かる。岩手の自然の美しい描写が彩りを添え、人の愛に溢れた感動の物語を紡いでいる秀作。2023/08/19
ふじさん
114
羊毛を手仕事で染め、織り上げられた「時を超える布・ホームスパン」を巡る親子三代の心の糸の物語。いじめが原因で不登校になった高2の美緒は、祖父母のくれたホームスパンのショールを巡って母親と口論になり、盛岡の祖父の元へ行く。祖父と共に働くことで、ホームスパンの魅力にひかれ、技術の習得に取り組む。一方、美緒不在の実家では、父親と母親に離婚話が持ち上がる。壊れかけた家族の絆はどうなるのか?夫婦、夫婦と娘、父と息子の葛藤が続く。最後は、それぞれの夢や希望を紡ぐ人々が新たな歩み始める。人の心を優しく包んでくれる。 2024/02/29